楽しいリスク分析――熊とワルツを踊るように 【その1】リスクの三銃士:山浦恒央の“くみこみ”な話(65)(2/3 ページ)
「リスク分析」という言葉をよく聞くようになりましたが、実際に行うプロジェクトは少ないのではと思います。リスクの洗い出しと対処策の検討を、身近な例と対比しながら考えます。
2. 歴史上のリスク
人類は過去、数多くの重大リスクを経験してきました。筆者がすぐに思いつくものとして、「オイルショック」と「Y2K」問題があります。ソフトウェアのリスク管理を解説する前に、過去の出来事を振り返ります。
2.1 オイルショック
1970年代、日本では石油価格が急騰しました。ガソリンスタンドも休業し、自動車の売り上げも減少し、日本の産業界に深刻な影響を与えました。最大の問題は、「石油製品が買えなくなる」と大騒ぎになったことでした。
石油製品の代表例はトイレットペーパーと洗剤です。これが使えなくなるリスクは尋常ではありません。主婦は、このリスクを回避するため、町中のスーパーで買いだめが起こりました。
2.2 Y2K問題
昔のプログラムは、西暦のデータを下2桁しか持っていませんでした。これでは、1999年から2000年に移行できません。いわゆる、「Y2K(Year of 2 thousand)」問題で、1999年に大きな騒ぎになりました。
Y2K問題では、ソフトウェア・エンジニアも大変でしたが、主婦もパニックになりました。町中のあらゆる電子製品がおかしくなるリスクがあると考え、食料の備蓄を呼びかけるニュースが溢れました。筆者の家も天然水を備蓄した記憶があります。結果としては、大きな混乱はありませんでした。
このように、人類は数多くのリスクを経験し、それに対処してきたことが分かります。ですが、これらの問題を予測できた人がどれだけいたでしょうか。リスクは目で見て確認できません。リスクが発生した時、「もっと早く対策をしておけば……」と思うのですが、起きるかどうか分からない問題に対しては腰を上げにくいのが現状です。
リスクは、生活のあらゆるところに潜んでいます。自分が何をしていてもリスクがあります。極端に深く広く考えすぎると何もできなくなりますし、一切考えないと、「問題」の真っただ中に巻き込まれてしまいます。これを踏まえながら、次の章では、ソフトウェア開発プロジェクトを管理する上でのリスクを解説します。
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