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迫る破綻のカウントダウン! その時、企業再生のプロはこうやって企業を再生する再生請負人が見る製造業(1)(2/3 ページ)

グローバル競争が過熱する中、製造業でも競争に敗れ苦境に立たされる企業は数多い。毎年のように企業決算で叫ばれる「構造改革」や「経営再建」の舞台裏は果たしてどうなっているのか。ゼネラルモータースや日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、各業界の状況について解説する。初回となる今回は企業再生の手法について紹介する。

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破綻危機企業に必要な「ホリスティック・ターンアラウンド」の実際

 われわれのような外部の再生企業の役割は、そのような企業に対して、いち早く破綻に結び付くリスクの警鐘を鳴らし、その対応策の検討・実行を促し、破綻を予防することにある。われわれはある意味で企業における医者のような役割を果たす。表面上は健全な企業においても、経営危機に陥る潜在的なリスク要因を抱えている場合が多い。それを診察してより早期に発見し、対処していく。

 病状が初期の場合は、コスト削減やバランスシートの改善などによる対症療法で十分だが、病状が悪化していると企業全体において包括的な再生措置を行う必要が出てくる。いわば全身を総合的に考えて手術するわけだ。それをわれわれは「ホリスティック・ターンアラウンド」と呼んでいる。

 破綻間近の企業は、抜本的な施策を多面的かつ迅速に実行することが必要になる。ホリスティック・ターンアラウンドによる包括的な再生とは、損益計算書(P&L)上における収益力強化だけでなく、財務面(バランスシート)と資金繰り(キャッシュフロー)の改善を同時に行い、また必要に応じて事業ポートフォリオや、経営管理体制、組織構造まで変革することだ。

 具体的な例として、われわれが中国で手掛けた部品工場再生の事例を紹介する。

 顧客企業は約20年前に公営企業として設立された家電製品向けの部品メーカーだ。5年前に資本の過半を日本企業に譲渡し、合弁会社として部品をグローバルに供給することになった。しかし親会社の経営管理が甘く、合弁会社となってから一度も黒字化したことがなく、さらに欧州市場の需要の急激な落ち込みにより、早急に再生への取り組みが求められる状況だった。そのような状況で、親会社から抜本的な収益改善の依頼を受けたわれわれは中国にある合弁会社に向かうことになった。

迫る破綻へのカウントダウン

 まずわれわれが行ったのは、状況の把握である。この会社も業績不振企業の例にもれず、経営陣が親会社にコミットした事業計画が一度も達成されないまま、業績が急速に悪化していた。事前の説明で聞いていた同社の問題点は、以下の3つだった。

  1. 製造工場の不良品率が異常に高く、不良在庫が積み上がっていたこと
  2. 売上高拡大において極めて重要な新製品の発売が予定より3年も遅れていること
  3. 現地人の経営チームの管理が弱く、業績管理が後追いになっていること

 これらの問題は目に見える事象で、いずれも表面的な問題であり、重要なのはその根本的な原因だ。われわれはそれをできる限り早く特定する必要があった。通常は4〜8週間かけて行う「クイックストライク」という手法で初期診断を行う。その作業は、企業の実力値を客観的に見定め、包括的な改善手段を決め、その中で重要なものから着手していくというものである。

 同社での再生への取り組みの場合も当初はこの手法を取ったが、分析開始から2週間後、思わぬ事態が判明した。同社の資金が4週間後に枯渇し破綻するというのだ。破綻を避けるためには、まず資金繰りを正確に把握し、早急に事態を改善する必要があった。資金繰り改善については、売掛金の回収を急ぎ、調達の支払い時期を伸ばし、処分可能な資産を売却するなどの基本的な打ち手を即座に行うようにした。また現地銀行からの借入金の借り換えに備えた交渉や、不要設備のアウトソース先への譲渡などにも早急に手を付けた。

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