富士通セミの「接近物検知ライブラリ」、誤検知防止技術で認識精度が1.3倍に:人とくるまのテクノロジー展2014
富士通セミコンダクターは、「人とくるまのテクノロジー展2014」において、車載カメラで撮影した映像データから、自車両に接近する他の車両や歩行者などの物体を検知する「接近物検知ライブラリ」を紹介。独自の誤検知防止技術の採用により、認識精度を示すF値を従来比で1.3倍となる80%まで高めたという。
富士通セミコンダクターは、「人とくるまのテクノロジー展2014」(2014年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、車載カメラで撮影した映像データから、自車両に接近する他の車両や歩行者などの物体を検知する「接近物検知ライブラリ」を紹介した。
車載カメラを用いる運転支援システムの検知アルゴリズムは専用ハードウェアを使うことが多い。これに対して富士通セミコンダクターの接近物検知ライブラリは、汎用ICとソフトウェアの組み合わせによって運転支援システムの検知アルゴリズムを実現しようというものだ。
2013年から展示会などに出展して提案活動を進めてきたが、今回ついに商品化することとなった。2014年5月には、富士通セミコンダクターの汎用グラフィックスIC「MB86R24」を搭載する開発ボード上で動作する評価版の提供を始める。同年9月には製品版の販売を開始する予定だ。動作条件は、ARMのアプリケーションプロセッサコア「Cortex-A9」の動作周波数が533MHz、ROM容量が約90kバイト、RAM容量が約4Mバイトの場合に、サイズが720×480画素の映像データに、240×160画素の検知領域を2面分適用することができるという。
商品化に向けて、独自の誤検知防止技術の採用によって認識精度を大幅に高めた。検知アルゴリズムを評価する際には、インターネットの検索エンジンなどと同様にF値という基準を用いる。F値が高いほど精度は高い。さらにF値は、検知すべき対象をどれだけ網羅できているかを示す網羅率と、検知すべき対象をどれだけ正しく検知しているかを示す正報率というトレードオフの関係にある値の調和平均によって導出される。
以前の接近物検知ライブラリは、網羅率は80%と高いものの、正報率は50%と低かった。今回の商品化では、誤検知防止技術を採用して網羅率を80%のままに維持しながら、正報率を70%まで高めることに成功した。F値も、60%から80%と約1.3倍に向上している。また、雨や雪、曇りといった天候であっても80%のF値を維持できるという。
通過車両に関する誤検知の例。従来は、走行速度の速い車両が通過すると追従できず誤検知が発生しやすかったが、誤検知防止技術の導入により誤検知は発生しなくなった(クリックで拡大) 出典:富士通セミコンダクター
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