弱点は「見通しの甘さ」――日本含むアジア企業のリストラ増加を再生請負人が警鐘:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
アリックスパートナーズは、アジア太平洋地域における事業再生の動向について調査。アジア太平洋地域で全般的にリストラ案件が急増する予測を示した他、企業の再生を妨げる要因が「“現実離れした期待”にあるケースが多いことがアジア企業の特徴」という調査結果を発表した。
コンサルティングファームのアリックスパートナーズは2014年5月23日、アジア太平洋地域における事業再生(リストラ)の動向についての調査結果を発表した。
同社は企業再生を中心としているコンサルティングファームで、米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空(JAL)など多くの企業の再建に関わっている。今回はアジア太平洋地域で活動する銀行員や弁護士、ファンドマネジャー、政府関係者、リストラの専門家など150人にアンケート調査を行い、同地域における企業再生の動向についてまとめた。
70%が今後1年間に企業のリストラが増加すると予測
調査によると、アジア太平洋地域においてリストラ案件が「著しく増える」が13%、「少し増える」が57%となり、合計で70%が「リストラ案件が増える」という見通しを示した。
同等の基準で欧米の動向について調査していないため明確な比較はできないものの、この数値については「欧米に比べて高めで、不安定な企業が多いということがいえるだろう」とアリックスパートナーズ・アジアの日本共同代表でマネージング ディレクターの野田務氏は語る。
地域別に見てみると、インドが2013年の調査に比べて大幅に増加。「大きく増える」が27%、「少し増える」が60%となり、全体では87%が増加すると予測されている。また2013年の調査では、「増える」が100%となった日本と韓国についても、数値は下げたものの引き続き高水準となっている。
「日本ではアベノミクスの円安効果により好転したように見えるが、事実上為替の効果だけで構造不況に陥っている企業にとって状況は何も変わっていない。このチャンスを生かし再建を進めてきた企業にとってはいいが、そうでない企業は2014年度以降必ず苦しくなる。2014年度は明暗分かれる1年になるだろう」と野田氏は語る。
またGDPの伸びが鈍化したといえ、成長を続けている中国についても全体で74%が事業再生案件が増えると予測している。これについて、アリックスパートナーズ上海のマネージング ディレクターであるステファン・マウラー(Stephen Maurer)氏は3つのポイントを指摘する。
「中国経済はGDP成長率が7%を維持するなど順調のように見えるかもしれないが、多くのリスクを抱えている。まずGDP成長率の多くが政府によるインフラ投資によるものでそれが実際の消費に結びついていない。また資金面でも欧米の金融機関が撤退するなど企業にとっては調達に苦しむ状況に陥っている。さらに中国では政府や自治体との合弁形式を取る企業が多いが、政府や自治体にとって合弁企業の意味は雇用を生み出すことであるため、市場環境の変化があっても人員削減ができず、財務体質が脆弱(ぜいじゃく)になりがちだ。事業再編を考えなければならないケースは増えるだろう」(マウラー氏)。
産業別で見ると危機を迎えた産業として、最も多かったのが金融関連だった。次いで産業材、不動産、自動車関連、ハイテク・通信関連などが続いている。日本では産業材とハイテク・通信関連がトップ2を占めており、製造業が事業再編の中心となる見通しだ。
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