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ソーシャルメディアやクラウドファンディングを活用するマイクロモノづくり概論【人づくり編】(2)(1/2 ページ)

今回は、マイクロモノづくりにおけるソーシャルメディアやクラウドファンディングを使ったコミュニケーションや情報発信、効果について述べる。

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 2009年11月に私(宇都宮)と三木で立ち上げたenmonoは、今も2人で運営している。大きな資本があるわけでもないし、何らバックアップがあるわけでもない。何も持たない、ほとんど個人事業のような規模で、しかもそれまでにないようなビジネスをしようとしている会社が、どのようにして少ないリソースの中で、5年近くも継続してこられたのか。そこには、“無の運用”としてのITツール活用と社会の変化が大いに関係している。

 今回は、われわれenmono自身の例も交えながら、ソーシャルメディアやクラウドファンディングを使ったコミュニケーションや情報発信、効果について述べていく。

ITツール活用

 2009年ごろからTwitterやFacebook、Ustream、YouTubeなどのソーシャルメディアが発達してきた。これらのツールにより、誰でもコンテンツを作って情報発信ができ、双方向での情報共有が可能になり、「人と知り合うこと」が大変容易になった。

 ソーシャルメディアがなければ、今頃、当社は存在していなかったと断言できる。従来、企業の情報発信手段は、プレスリリースを出しマスメディアに取り上げてもらう、展示会でアピールする、あるいはダイレクトメールで個別に案内するなどしかなかった。そのような手段で広報や営業をしていては非常に経費が掛かり、すぐに資本がなくなってしまっていただろう。

 ただし当社がソーシャルメディアを使う理由は、主に「人と知り合うきっかけ」としてである。ネット上で全てのビジネスが完結するとまでは考えていない。まず情報を発信し、そこにピンときた人に来てもらえるような営業方法を取っている。私のコメントが掲載されたCAREER HACKの記事からの引用をご覧いただきたい。

僕が思うのは、お金は後からついてくるもの、ということ。おもしろそうなことをしていれば、そこに人が集まってきて、もし、何か価値を感じてもらえたらお金がもらえる。だから、お金を稼ぐことより、「人」と「人」をつなげたり、リソースをオープンにしたり。それを対価に結びつけていくイメージなんです。お金ってもらいにいこうとすると、なかなかもらえない(笑)だから、向こうから来てもらえるような「場」をつくることが大事なんです。

 このような方法は、経営資源が少ない町工場やフリーランスで働く個人事業主、コンサルタント、スタートアップにも応用できる考えではないだろうか。

社会の変化

 マイクロモノづくりというコンセプトは、「誰もが必要とするモノは、既に有り余っていて大量生産したとしても、それに見合った需要はもうないのではないか」という仮説から考えついたものだった。

 誰もが必要とするものではなく、少なくとも自分及び数人は顔の浮かぶ誰かは、必ず欲しがるだろう。だけどそんなものはどこにも売っていない。だから作ろう――こういう流れで創出されるモノづくり、これがマイクロモノづくりにおける商品企画である。

 少なくとも自分自身や、数人の誰かは、必ず欲しがるだろうというものは、従来のモノづくりでは、ニッチ過ぎてビジネスにはならず、“趣味のお遊び”だったはずである。しかし、そのお遊びで作ったものを誰もが情報発信できるようになったことで、場合によっては世界中に情報が伝わり、そしてソーシャルメディアの特徴で反響が自身に伝わるようになってきているのである。

 ニコニコ動画でいう「作ってみた」シリーズのように、ネタ的なものでも何でも、今まで見たこともないようなものを作ってみて発表してみたら、反響があるという、これが、マイクロモノづくりにおけるマーケティングである。

まずは自分を見つめて商品開発をおこなう。しかし、せっかく個性を取り出しても、それを他者に向けて説明できなければ、マーケットはいつまで経っても一人のままだからだ。他者に伝えた時、その内容にどれくらいの人が共感したり、面白がったりして、お金を払ってくれるのか? それを探ることを、「マイクロモノづくり」的マーケティングとしておこなわなければならない。その際に、伝わりやすいストーリーが重要になる。

「マイクロモノづくりはじめよう」(テン・ブックス刊)P227より

IT(Information Technology 情報・技術)

 IT活用とコミュニケーションについては、以下の図1を示しながら説明していく。


図1 コミュニケーション(「zenschool」の資料より)

 人と知り合うためには、当然ながらコミュニケーションが必要になってくる。この図のようにさまざまな、コミュニケーションの形があり、ツールがある。

 最初は、あまりコストを掛けず、一方的に、不特定多数への情報発信をする目的でITを使い始めるだろう。例えば、Webページを作ったり、ブログを書いたり、YouTubeで動画を作ったり、FacebookやTwitterを始めたりなどである。

 不特定多数への情報発信といっても、実は、多数になっていないのである。発信した内容が、多くの方にも見てもらってはじめて、情報発信となる。ITツールで情報発信すると世界中の人から見られていて、すぐに何らかしらの反応がありそうな期待感を持つだろうが、実際は誰も見ていない。そういう現実を理解していなければ、1〜2カ月で挫折してしまうだろう。

 誰もいない虚空に向かって、自身の思いを発信し続け、その先にコミュニケーションが生まれる。TwitterやFacebookが流行しだした数年前までは、半年ほどで知り合いが増えてコミュニケーションが取れるようになった。しかし今は「誰もが使うツール」になったこととで、当時と同じやり方をやっていては、自分が埋もれてしまう。「埋もれない」手だてを考えるに当たっては、先行して活用してきた人に相談し、協力してもらうのがよいのではないだろうか。

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