体内に“小さな心臓”を作る!? 静脈の血流を上げる効果も:医療技術
米大学が、幹細胞由来の心筋細胞から新しい臓器を作り出すことに成功した。ポンプのように伸縮し、静脈の血流をよくする働きが期待できるという。世界中にまん延している慢性静脈不全の治療にも役立つ可能性がある。
米ワシントンのジョージ・ワシントン大学は2014年3月27日(米国時間)、同大学の研究者であるNarine Sarvazyan博士が、静脈の血流をよくする“新しい臓器”を作り出したと発表した。幹細胞由来の心筋細胞でできたこの臓器は、ポンプのように伸縮して静脈の血流を助ける。同大学は、「小さな心臓」と表現している。患者自身の生体幹細胞から作り出すので、移植拒否反応を示す可能性も低いという。
Sarvazyan博士は、「今回の結果は、幹細胞によって、損傷した臓器を修復したのではなく、“臓器を作り出した”と言える。もう1つの心臓を作り出し、それを下肢の静脈に置くことで、静脈の血流が大幅に向上する効果が期待できる」と述べる。
慢性病の治療に有効か
“小さな心臓”を作り出すというこれまでにない方法は、慢性病の治療に貢献する可能性がある。例えば慢性静脈不全は、世界中、特に発展途上国で最もまん延している病気の1つだ。50歳以上の20〜30%が慢性静脈不全を患っているというデータもある。米国では、この病気に関連するコストが、ヘルスケア関連のコストの約2%を占める。さらに、静脈の血流が悪いと、糖尿病患者やまひ患者、手術後の経過観察が必要な患者にとって大きな問題となる。
今回の研究成果は「Journal of Cardiovascular Pharmacology and Therapeutics」に掲載されている。臓器の修復から“生成”へ技術を発展させたことで、組織工学(Tissue Engineering)分野に大きな飛躍をもたらす可能性がある。今後、Sarvazyan博士と研究チームは、今回の方法の実用性を体内で立証すべく、研究を進めていく予定だ。
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