看護師の動きをリアルタイムに追跡、院内業務の改善点が浮き彫りに:センシング技術(2/2 ページ)
米フロリダ州の病院は、院内における看護師の動きをリアルタイムでトラッキングする技術を導入している。公共施設や商業施設では、利用者の行動パターンをトラッキングして、利便性などを向上する取り組みが始まっているが、この病院では、トラッキング技術によって、非効率的なワークフローなどが明らかになったという。
これまで同病院では、真夜中の時点での入院患者数によって看護師の配置数を決めていた。だが、トラッキング技術を用いてスタッフの動きを分析したことで、異なる視点から看護師の作業負荷を見ることができるようになったという。「当病院では、看護師の配置数を実際に必要な数よりも低く見積もっていたことが分かった」(Toor氏)。
同病院では、トラッキングの結果を基にスタッフを再配置するところまでは、まだできていない。だが、非効率的なワークフローを洗い出すよい機会になったとしている。
例えば、これまで、使用済み輸液ポンプの殺菌は朝6時に行われていた。だが、退院する患者が多い時は、この時間帯に多くの雑務が発生するので、殺菌の作業が後回しになってしまうこともあったという。だが、トラッキングの分析により、午後1時と3時は比較的忙しさが落ち着く時間帯だということが分かった。そのため、ポンプの殺菌をこの時間帯に移動したという。Toor氏は、「ITの手助けがなくても、こうした問題点に気付くのではないか、と思う人もいるかもしれない。だが、目を回すほど忙しい日々の中では、なかなか気付けないのが実状だ」と語った。
他にも、看護師が2人の患者を世話するように割り当てられ、それぞれの患者が廊下を挟んで反対側の部屋にいる場合、トラッキングによる動線の可視化によって、移動の大変さが明らかになるという事例もあった。この場合は、患者の病室を移したり、割り当てを変えたりすることで対処できる。
Florida Hospital Celebration Healthの看護師がトラッキングを受け入れた理由の1つは、病院側が看護師に自分のトラッキングデータを見ることを許可したからだ。Toor氏は、「その日1日、実際に自分がどう動いていたかを確認できるのは、非常に意味がある」と語っている。
Toor氏は、「今後は、救急病棟にこのトラッキング技術が導入される。患者にとって、救急医療体制の下に長くいることは大きな負担になる。早く一般病棟に移れるよう、効率的な処置を行えるようになるのではないか」と期待を述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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