スマートハウスの“すでに起こった未来”――スマートセル的な作り方とは:和田憲一郎の電動化新時代!(12)(2/4 ページ)
「スマートセル」。聞きなれない言葉かもしれないが、「横浜スマートコミュニティ」に建設された研究・実験ハウスの名称だ。現在、スマートセルを使って進められている実証試験の手法は、従来のスマートハウスとはやや趣が異なる。では、一体何が異なるのか、果たして将来に向けた実証試験の進め方としてお手本となるのか。関係者に取材しその実像に迫った。
ヘルスケアや住宅間の連携もテーマに
和田氏 スマートセルによる実証試験は、スマートハウスやスマートコミュニティーの開発にどのような影響をもたらすのか。
有馬氏 実は、実証試験の参加者である横浜スマートコミュニティのメンバー自身が、この試験の持つ意義や社会的影響を実感し、理解することが最も大きな意義があるかもしれない。また、いくらコンピュータ上でシミュレーションをして動作できると言っても、それらを実装し、実機として動かせることを証明できなければ、他の方々になかなか信じてもらえない。モデルベース開発によってシステムを開発でき、それがコンピュータ上のみならず実機でも同じように動くのを証明できたことにも大きな意味があると思う。
さらに今回の実証試験結果は、まだ確立されていない、スマートエネルギーシステム(スマートシステム)の第三者認証にも役立つと考えている。今後、スマートシステムが普及すれば、異なる企業の製品を接続して連携するといった事例も増えてくるだろう。こういった、異なる企業の製品を接続しても動作することを保証する際には、第三者認証が必要になる。例えば、系統電源のピークカット、負荷分散や停電対策、自然エネルギーの不安定さのサポート、EVへの多様な電源からの充電などを、実際に利用できることを第三者が認証するには、数式モデルに置き換えないと難しいのではないかと考えている。
これらスマートシステム全体の認証を検討するため、「スマートシステム検証技術協会(SVA)」を設立した。SVAは、システム全体としての信頼性や安全性など、利用者が求める品質を第三者が検証するための検証手法や検証技術の確立を目指している。現在、多くの参加企業とともに、リスク/ハザード分析手法や、スマートシステム全体のモデル記法、モデル上での検証手法など、安全性検証フレームワークの確立を目指して活動を行っている。
和田氏 今後はどのような展開を考えているのか。
有馬氏 もう1軒住宅を建設する予定だ。2014年4月から具体的に計画を実施し、来春(2015年春)までには完成させたいと思っている。
このもう1軒では、「ヘルスケア」と「隣家との連携」を目的としている。というのも、日本の少子高齢化が進みつつある中で、高齢者が1〜2人で住む住宅では何が必要なのか、ITとの融合はどうあるべきなのか、エネルギーやモビリティはどのように関連していくのか、といった将来的な課題を実際の住宅を作りながら具現化していきたい。
また、2軒の住宅をつなげることで、単体よりもエネルギーシステムの融通性を高められるのではないかと考えている。その成果は、マンションなどの集合住宅や、多くの戸数が住まう地域でも役立てられるはずだ。
和田氏 このプロジェクトはいつまで続ける予定なのか。
有馬氏 横浜スマートコミュニティは、設立時から、「100年続く街作り」をテーマとして活動に取り組んできた。平安京への遷都が計画された際には、1000年間繁栄が続く街作りを目指していたという。1000年とまでは言わないが、エネルギーの利活用に関して長期展望に立ち、未来のあるべき姿を探し求めていきたいと考えている。
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