PLCopenの「Safety FB」とは:PLCの国際標準プログラミング入門(5)(1/2 ページ)
「IEC 61131-3」と「PLCopen」について解説する本連載。今回はPLCopenの「Safety FB」について解説します。
「IEC 61131-3」と「PLCopen」について解説する本連載。前回は「PLCopenの『Motion Control FB】とは」をテーマに、「Motion Control FB」の利便性や活用方法を理解しやすいように具体的な事例を挙げながら紹介しました。
5回目となる今回は、安全性確保の面で注目が高まるPLCopenの「Safety Function Block(以下Safety FB)」について解説します。
安全確保機能のソフトウェア化(Safety Software)
製造装置や医療機器から、エレベーターや鉄道などの社会インフラに至るまで、安全性確保の必要性が高まっています。これらの装置では、セーフティリレーを用いたハードウェアによる安全性確保が主流となっていました。しかし、過去10年に及ぶ技術革新により「IEC 61508」を代表とする国際安全規格に対応したセーフティコントローラが各社から発売されるようになりました。その後の価格低下も相まって、急速にセーフティ回路のソフトウェア化が進んでいます。
また、装置の制御を行うPLC(Programmable Logic Controller)とソフトウェア言語、プログラミング環境、ネットワーク環境が統合されたセーフティコントローラも製品化されています。セーフティ回路のソフトウェア化に対するハードルはますます低くなり、導入しやすい環境になってきたといえます。
Safety FBとは?
ソフトウェアによるセーフティ回路が導入しやすくなってきたといっても、従来のセーフティコントローラは「ベンダー各社が独自仕様のSafety FBを用意し独自に認証機関の安全認証を取得する」というものでした。そのため、これらのセーフティコントローラを使用する場合は、各ベンダーのSafety FB仕様とプログラミング方法を学習する必要がありました。
また、装置の安全規格認証先が異なれば、装置の開発者自らが認証機関にFB仕様を説明する必要がありました。さらに、作成したセーフティプログラムはハードウェアに依存しており、ソフトウェア化のメリットがあまり得られないという問題もありました。
これらの課題を解決するために、制定されたのが「PLCopen Safety FB」です。
「PLCopen Safety FB」は、プログラムの再利用性、POUとタスクの概念、共通のルック&フィール(見た目や操作感)といったIEC 61131-3の特長を継承しつつ、Safety FBのインタフェース仕様や動作仕様が標準化されています。また、仕様策定や認証を行う技術委員会(Technical Committee)には欧州の安全規格認証機関も参画しています。そのため、「PLCopen Safety FB」を採用しているセーフティコントローラを使用することで、以下の効果が期待できます。
- トレーニングコストの低減
- プログラム再利用性の向上
- 安全規格認証コストの低減
加えて、IEC 61131-3に準拠したPLCと同時に使用することで、統合された共通のルック&フィールを持つプログラミング環境により、トレーニングコストの低減効果を高めることも期待できます。
PLCopen Safety FBの特長
「PLCopen Safety FB」では、装置の安全規格認証コストの低減のために、さまざまなガイドや仕様を定義しています。その一例として、セーフティデータ型変数(Safe Data Types)とユーザーレベル(User Levels)があります。
セーフティデータ型変数
安全性関連で使用するデータを区別するために、IEC 61131-3で定義されているBOOLやINTなどのデータ型の他に、セーフティデータ型としてSAFEBOOLやSAFEINTなどを追加で定義しています。
ユーザーレベル
セーフティプログラムの自由度により3つのユーザーレベルを定義しています(表1)。「基本レベル」は、使用可能なデータ型やファンクションに制限が設けられ、プログラムの自由度が低い代わりに安全規格認証の難易度が下がります。一方「システムレベル」は、C言語のような自由度の高いプログラミング言語をサポート可能ですが、安全規格認証を取得するためにはIEC 61508の要求を満足する必要があり、相当困難なものになります。
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