ゲノムを2日間で解析、スパコンの利用で:遺伝子疾患の解明が進む?
30億個を超える塩基対を持つゲノムを1つ解析するには、何カ月もかかるのが一般的だ。米大学は、スーパーコンピュータを用いて、240のゲノムを2日間で解析したと発表した。
遺伝子などの解析技術は着実に進んでいるとはいえ、約30億もの塩基対を持つゲノムを解析するには、現在でも何カ月もの時間を要する。そのような中、米イリノイ州のシカゴ大学は2014年2月、ライフサイエンス向けのスーパーコンピュータ「Beagle」を用いて、2日間で240のゲノムを解析したと発表した。2014年2月にオンライン上で公開された「Bioinformatics」ジャーナルに掲載されたもの。
Beagleは「Cray XE6」のスーパーコンピュータで、同大学が運営するアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)に、2011年に設置した。ノード数は726で、コア数は1万7424個。コアにはAMDの「Opteron」が採用されている。メモリは23テラバイト。
研究チームを率いたシカゴ大学のElizabeth McNally博士と、A. J. Carlson教授は、「今回の解析方法は、患者のマネジメントを変える可能性がある他、遺伝子疾患(遺伝子の異常が原因となって起こる疾患)を、より深く理解することができるようになるだろう」と述べる(関連記事:IBMのスパコン、ガン治療費の削減に光明)。
Beagleは、多数のゲノムを同時に解析するという。今回、McNally博士の研究チームは、Beagleを使用して61のゲノムを解析した。解析には、一般に販売されているソフトウェアを使用した。解析にスーパーコンピュータを利用することで、解析スピードと精度が大幅に向上したという。McNally博士は、「同時に、1ゲノム当たりの解析コストも下がる。今回の解析方法を使えば、これまでゲノムの一部分のみを解析していたコストよりも低いコストで、全ゲノムの解析が行える。1ゲノム当たり1000米ドルで解析できるようになることを目指したい」と述べる。
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