iPhoneとつながるスポーツウオッチ、カシオ「STB-1000」はこうして生まれた:製品開発インタビュー(2/3 ページ)
iPhoneの通知を受け取ったり、フィットネス系アプリと連携したりできる、Bluetooth Low Energy対応スポーツウオッチ「STB-1000」。スマートフォンとの連携という点で、Bluetooth LE対応G-SHOCKとそっくりな兄弟のようにも思えるが、実はさまざまな違いがある。STB-1000とはどのような製品なのか、カシオ計算機に話を聞いた。
第2世代エンジン搭載Bluetooth LE対応G-SHOCKとの共通点/違い
――第2世代エンジンを搭載したBluetooth LE対応G-SHOCKとの違いはどこか? なぜ、“iPhoneだけ”のサポートなのか?
長谷川氏 実は、Bluetooth通信用LSIとアンテナ、通信用プロトコルといった、Bluetooth通信全般をつかさどる部分に関しては、第2世代エンジンを搭載したG-SHOCKと共通だ。われわれはこの部分を“セカンドエンジン”と呼んでいるが、STB-1000でも全く同じものを搭載している。
大きな違いは、「iOS 7」からサポートされた「ANCS(Apple Notification Center Service)」という機能により、iPhoneから直接、STB-1000の液晶パネルに通知情報などを表示できる点だ。従来のBluetooth LE対応G-SHOCKの場合、スマートフォン向け専用アプリ「G-SHOCK+」がメールやSNSといった情報を取得しに行き、G-SHOCKへと通知情報を転送していた。これに対し、STB-1000では、特段の設定を行わなくても、iPhoneの「通知センター」に表示される情報を、専用アプリを介さずにBluetooth通信でSTB-1000に送ることができる。
つまり、Bluetooth LE対応G-SHOCKのように、メールアカウントを専用アプリ(G-SHOCK+)にあらかじめ設定しておく必要がなく、電話やメール、SNSはもちろんのこと、LINEなどの人気アプリからの通知も受け取れるということだ。Bluetooth LE対応G-SHOCKでは、一部キャリアメールに対応していないなど不便を掛けているが、こうした問題も起きない。ちなみに、STB-1000は欧米市場向けだが、半角カタカナの表示もサポートしている。
ANCS対応により、専用アプリで設定した限られた情報の通知ではなく、iPhoneの通知センターで受けられるさまざまな情報を腕時計に送れるようになった。これは、社内でも非常に評判の良い機能だ。
また、Android端末のサポートについてもよく聞かれるが、Andorid 4.3からサポートされているNotification ListenerをそのままBluetoothで送り出す仕組みがあれば、連携することも可能だろう。そうなれば、今後、サポートすることになると思う。
――Bluetooth LE対応G-SHOCKで好評だった「ミュージックコントロール」や「携帯探索」「時計設定」などは使えるのか?
長谷川氏 先ほど説明した通り、Bluetooth LE対応G-SHOCKでは専用アプリとしてG-SHOCK+を提供しているが、STB-1000でもほぼ同じ使い勝手の「CASIO WATCH+」というアプリを用意している。このアプリで通知の設定やミュージックコントロールなどが可能だ。
もちろん、CASIO WATCH+で各種時計設定を行い、それをSTB-1000に同期させたり、STB-1000のボタン操作でiPhoneの音を鳴らしてiPhoneの置き場所を探したり、といった従来通りの便利機能も活用できる。
あるときは普段使いの腕時計、そしてあるときはスマートウオッチ!
――「STB-1000」ではアプリパートナーとして、iOS向けにフィットネス系アプリケーション/センサーデバイスを手掛ける「Wahoo Fitness」と「Abvio」が名を連ねているが、どのようなことができるのか?
長谷川氏 STB-1000では、普段使いの腕時計が、スマートフォンのアプリと連動することで、あるときはスピードメーターに変わり、あるときは距離計に変わるといった利用を実現したかった。心拍計やケイデンスセンサーとiPhoneが連携して、iPhoneの画面上で計測結果を閲覧することは当たり前に行われているが、カシオはそこに腕時計も連携させることを考えた。今回、アプリパートナーとなった2社は、こうしたわれわれのコンセプトに賛同してくれた企業だ。
例えば、iPhone対応の心拍計を身体に付け、ランニングアプリを起動してジョギングを開始すると、心拍数や距離、ラップタイムなどの情報がiPhoneアプリに蓄積されていく。通常であれば、こうした情報はiPhoneの画面を操作して確認することになるが、STB-1000であれば、時計のボタン操作だけで腕時計の液晶パネル上にリアルタイム(通信の関係上、実際はわずかにタイムラグがある)の心拍数や距離、ラップタイムなどの情報を表示できる。
STB-1000自体にGPSやセンサーなどを内蔵しなくても、iPhoneや、iPhoneとつながるセンサーデバイスを活用することで、機能の幅を無限に広げることができる。われわれは、こうしたコンセプトの下、“いま着けている腕時計が、あるときスマートウオッチになる”という魅力をSTB-1000で訴求していきたい。
現在は、Abvioの「Runmeter」「Walkmeter」「Cyclemeter」と、Wahoo Fitnessの「Wahoo Fitness」という4つのフィットネス系アプリが、STB-1000との連動を実現している。2014CESでも実際にいろいろな企業に声を掛けてもらったが、当面、スポーツ/フィットネス分野向けのアプリ開発メーカーやデバイスメーカーなどとアライアンスを組んで、サポートアプリをさらに充実させていきたい。
――ANCSによる「通知」以上に、「Wahoo Fitness」と「Abvio」のiOS向けアプリは、かなり「STB-1000」と密接に連携しているようですが?
長谷川氏 時計のボタン操作でiPhone側のアプリを制御したり、情報を取得して同期表示させたりする必要があるので、アプリの領域の中に、時計との通信(時計に情報を表示させる/時計から信号を受け取るなど)を行うためのAPIモジュールを組み込んである。今回のWahoo FitnessとAbvioに関しても、共通のAPIをアプリ内に組み込んでもらった。
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