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化学電池と物理電池を超える“量子電池”、「バテナイス」とは電気自動車(2/2 ページ)

半導体テスター用プローブカードの大手企業として知られる日本マイクロニクスが、新構造の二次電池「バテナイス」の実用化に向けて開発を加速している。バテナイスは、リチウムイオン電池などの化学電池や、電気二重層キャパシタなどの物理電池を上回る特性を持つ“量子電池”だという。

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リチウムイオン電池と電気二重層キャパシタの特性を上回る

 ここからは、バテナイスの特徴を見ていこう。

 まず電気二重層キャパシタと同じ物理電池なので、出力密度や二次電池の寿命に当たる充放電回数に優れる。出力密度は8000W/l(リットル)、サイクル寿命は10万回で、出力密度については電気二重層キャパシタを上回るレベルだ。化学電池の代表であるリチウムイオン電池と比べると、出力密度は1桁以上、サイクル寿命は2桁上回っている。

 物理電池の最大の課題はエネルギー密度である。電気二重層キャパシタはWh/lで1桁しかないが、現行のリチウムイオン電池は数百Wh/lが一般的だ。これに対してバテナイスは500Wh/lに達する。

 電気二重層キャパシタは、容量が減少するとそれと比例するように出力電圧が減少するという放電特性がある。化学電池のように、容量が減少しても同じ値の出力電圧を維持できないのだ。バテナイスは物理電池ではあるものの、化学電池と同じように、容量が減少しても出力電圧を維持できるという放電特性を備えている。

 またバテナイスは、基材となるシート材料の上に負極となる電極膜を形成し、その上に充電層となる酸化物半導体の薄膜、負極となる電極膜を順番に積層した構造になっている。シート材料と負極を含めた部分の厚さは10μm、酸化物半導体の薄膜と正極を含めた部分の厚さは1μmで、合計の厚さは11μm。シート構造なので、折り曲げが可能である。

 化学電池は、電解液を使うため、破損した際に電解液が漏れてしまう危険がある。バテナイスは液体材料を一切使っていないので、そういった問題はない。また、液体材料に起因する、低温や高温で使用した際の特性低下も起こりにくい。

 なお出力電圧は1.5Vである。これは、リチウムイオン電池の3.2〜3.7Vや、電気二重層キャパシタの2.5Vよりも低い。

特性 バテナイス リチウムイオン電池 電気二重層キャパシタ
出力電圧 1.5V 3.2〜3.7V 2.5V
出力密度 8000W/l 数百W/l(高出力タイプ) 1000W/l以上
エネルギー密度 500Wh/l 500Wh/l以上(高容量タイプ) 5Wh/l前後
サイクル寿命 10万回(現在は1万回) 1000回以下 10万回以上
使用温度範囲 −25〜85℃ −20〜50℃(5〜30℃での使用が望ましい) −25〜60℃
表1 バテナイス、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタの特性比較

 展示会場では、コニカミノルタのフレキシブル有機ELパネルにバテナイスを張り付けてそのまま発光させるデモンストレーションにより、折り曲げ可能な特性をアピールしていた。

 また、300×300mmサイズのシートに280×280mmサイズの充電層(+正極の電極層)を単層で形成したもの(重量は7.5g)や、100×100mmサイズのシートに88×88mmサイズの充電層を8層積層したもの(重量は6.6g)も展示していた。

「バテナイス」の開発品
「バテナイス」の開発品。300×300mmサイズのシートに280×280mmサイズの充電層(+正極の電極層)を単層で形成したもの(クリックで拡大) 出典:日本マイクロニクス

2014年内に評価キットを発売

 それでは、バテナイスの開発は実際にどこまで進んでいるのだろうか。

 日本マイクロニクスの説明員によれば、「出力電圧、出力密度、エネルギー密度、動作温度範囲はほぼ近いところまで達成できている。ただし、サイクル寿命(容量が初期の90%以下になる充放電回数)は1万回といったところだ。2014年内には、バテナイスの評価キットを発売することで、シート形状や出力密度の高さといった特性を生かしてもらえるような用途を、広く探索してもらえるようにしたい」という。

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