もはや自動運転レベル!? 進化を続けるクルーズコントロールシステム:いまさら聞けない 電装部品入門(12)(3/4 ページ)
高速道路などで一定車速で巡航走行するのに用いるクルーズコントロールシステム。渋滞が多い日本の道路では「いまいち使えない」という評価も多かったが、車間距離維持システムや車線維持システムと融合することで、ほぼ自動運転と言えるような機能を持つようになっている。
アダプティブクルーズコントロールシステムへの進化
DBWシステムが普及した時点で、クルーズコントロールシステムのレスポンスは飛躍的に向上しました。しかし、それでも交通量が多く、割り込み、渋滞が日常的に発生する日本の道路環境では一定速度で巡航できるメリットはあまり感じられませんでした。
しかし、車両側で電気的にブレーキを制御できる横滑り防止装置(ESC)や、レーダーや車載カメラを使った車間距離維持システムの登場によって、クルーズコントロールシステムは、日本の道路環境でも「使える」、アダプティブクルーズコントロールシステムに進化し始めています。
横滑り防止装置については、「いまさら聞けない シャシー設計入門」の第10回記事を参照していただくとして、車間距離維持システムについて説明しておきましょう。このシステムは、レーダーや車載カメラなどによって前方車両との車間距離を測定し、あらかじめ設定しておいた車間距離(速度によって変化)を維持できるように加減速を行うためのものです。
従来のシステムでは、道路状況によって前方車両の車速が時速100kmから時速80kmまで減速した場合、ドライバーがブレーキを踏んで減速し、自らの運転操作で車間距離を保持する必要がありました。つまり、クルーズコントロールシステムで巡航走行していても、前方車両の動向を意識していなければならず、簡略化できるのはアクセルペダルを踏み込む操作だけでした。
しかし、車間距離維持システムを導入したアダプティブクルーズコントロールシステムは、車間距離を維持できるので、前走車が減速すれば自動でブレーキをかけて減速して一定の車間距離をキープし、前方車両が加速をすればそれに合わせて自動で加速してくれます。
さらに急な割り込みなどで車間距離が急激に短くなった場合でも、しっかりと減速を行なって車間距離をキープしてくれるのです。
建前上は、「通常運転時と同様に最大限の注意を払って……」というのは当たり前だとしても、アダプティブクルーズコントロールシステムを使えば、実質的な運転操作がステアリング操作だけになると言っても過言ではないほど、ドライバーの疲労軽減に寄与してくれます。
「運転はステアリング操作だけ」と書きましたが、そのステアリング操作を大幅に軽減してくれる車線維持(レーンキープ)システムも登場しています。
このシステムを使えば、白線(黄線)がきれいに施されている道路であれば、車載カメラで車線を検知します。そして、車両が検知した車線内に収まるように自動的にステアリング操作を行ってくれるのです。
もちろん手放し運転は禁止であり、実際にステアリングから一定時間手を離して運転をしていると「ハンドル不保持警告」が出ます。しかし機構的には、高速道路のカーブ程度なら自動で曲がれてしまうのです。
このように、車間距離を測定したり、自動でブレーキをかけてくれたりする技術が10年ほど前から登場しています。実は、最近になって急速に導入が進んだ、前方車両との衝突事故が回避可能なプリクラッシュセーフティシステム(富士重工業の「アイサイト」など)は、かなり前から実行可能な技術であった訳です。
もちろん導入が進まなかった理由に、コストの問題があったことは否めません。しかし最大の理由は、車両側の判断で自動停止する技術の市場導入を国土交通省が認可しなかったことにあります。
もちろん、現行のプリクラッシュセーフティシステムも、「自動で完全停止します」と宣言しているものはありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.