中小製造業の生き残り戦略とインターネット――中村智彦教授、語る:中小製造業の横連携イベントで見る今(2/2 ページ)
地域の中小製造業の横連携について研究する神戸国際大学経済学部の中村智彦教授が語った、日本の中小製造業の生き残り戦略とは。今大事なのは、インターネットを活用した、中小製造業自らの情報発信だ。
中小製造業横連携における情報発信の例
長野県内の技術者コミュニティーである「SWCN」は、地域の製造業企業間のネットワークを重視し、コミュニティー主催イベントを開催してきた。Web上での情報発信も行ってきた。そんなSWCN自身が開催するイベント規模や交流規模も拡大してきている。コミュニティーメンバーを刺激し、勢いに拍車を掛けたのは、やはりSNSの活用だったようだ。
2012年3月にMONOistが全国の中小企業が集まって開催した「全日本製造業コマ大戦」に出場した際、コマの機構設計をSWCNメンバーであるスワニーに依頼した。その後、当時の設計を発展させた製品「サクラコマ」が誕生し、伊那市内の中小製造業7社と市社会福祉協議会による「製造業ご当地お土産プロジェクト」が実現した。要は、「伊那市内の企業で地元のお土産を企画・製造・販売することで、地元産業を振興する」プロジェクトである。2014年2月から、サクラコマで得た収益を生かして製作した「とことこイーナちゃん」の販売も開始する。
SWCNのイベントでは、ストリーミング配信や録画配信、プロモーション動画制作などが当たり前のように行われているが、それもまた10年以上前では、その道に詳しい人の手を借りないと難しかったことだった。
このようなイベントを開催するとともに、今日の恵まれたIT環境を駆使して情報発信し、「自分たちが今、一体どんなことをやっているのか、広く世の中に伝えていくことが必要」だと中村氏は言う。その一方で、「大きな規模のイベントとなれば、いろいろな人が集まってくる。“本物”を見極める目を養っていく必要がある」とも述べており、情報を得る・関わる側の高いリテラシーも必須となってくるといえる。
また、SWCNに見られるように、単に企業間の交流というのではなく、地域社会の中での企業の役割を認識し、異業種・異分野の人たちとの地域内ネットワークを構築することが大切だ。
「中小企業の経営者の中には、たまたま自分たちのネットワークグループがマスコミなどに取り上げられ、行政から表彰されたりすることで拡大志向に走る人たちもいるが、大切なのは自分たちの立ち位置をしっかり固めること。SNSで世界を広げる一方で、自分たちの地域社会を大切にする姿勢を失うと、一時の流行に終わってしまう」(中村氏)。
「常識」という名の思い込みを捨て、便利な道具をうまく使え
「SNSには、『なりすまし』『バカ発見機』といったネガティブな話題も多いが、使い方を誤らなければよいだけ。ちゃんと使えば答えてくれる」(中村氏)。SWCNのイベントを見ても、SNSは道具であり、目的にはなりえない。「便利な道具は積極的に使えばいい」。あくまで、そこで生まれたきっかけを自分がどう生かすかである。それを忘れることなく、日本のモノづくりを発展させていってほしいと中村氏は述べた。
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