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日本のモノづくりが息づく台湾企業(前編)大学教員は見た! ニッポンの中小企業事情(6)(2/2 ページ)

いまやモノづくり分野での存在感が大きい台湾。今回は、台湾企業3社におけるグローバル化と日本のモノづくりとのつながりについて紹介する。

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2.台湾のモノづくりに息づく「日本」

 台湾のモノづくり企業を訪問すると、そこかしこに「日本」を発見します。筆者はこれまで韓国、シンガポール、タイといったアジアのモノづくり企業を100社近く訪問してきましたが、台湾の企業は特別だと感じます。

Good Will Instrument

 新北市のGood Will Instrument(従業員数700人)は測定器の開発・生産を手掛ています。


筆者(中央)の右隣がGood Will Instrument 林錦章社長

 現社長が測定器の台湾・国産化を企図して、創業した企業です。同社は中国に生産拠点、マレーシア、米国、日本、韓国、インドに販売拠点を持ち、マレーシア人やオーストラリア人の従業員も働くグローバル企業です。しかし、創業後初の海外支社が日本支社など、日本との関係が深く、社長は今でも毎月1回は日本を訪問しているとのことです。実際、同社の応接室には日本の兜(かぶと)や人形といった日本の置物が所狭しと並べられていました。


全世界に輸出されるGood Will Instrumentの測定器


本社の応接室:日本の置物が飾られています。

Eternal Chemical


筆者の右隣がEternal Chemicalの社長(2013年当時)

 Eternal Chemical(長興化学、従業員5000人)は特殊化学品、樹脂事業、電子化学事業(光学シート)を手掛けていて、積極的に中国に生産展開をし、中国の大学・研究所と連携、ドイツ企業や日本企業とジョイント・ベンチャーも設立している研究開発型のグローバル企業です。

 同社の図書館を訪問すると、そこには日本の古い技術書、また日本では既に出版社が廃業し、絶版となっているような技術雑誌が大切に保管され、並べられていました。筆者はすっかり感動し、日本の出版関係者の方々をお連れして、お見せしたいと思ったくらいです。この企業のモノづくりにも「日本」が存在していたのです。


図書館に立ち並ぶ日本の古い技術関連の書籍:どの本も熱心にひも解かれた形跡があり、また大切に保管されています。

3.台湾と日本との強いつながり

 以上、幾つかの台湾のモノづくり企業を見てきました。台湾企業は、グローバル化を積極的に推進しており、筆者も当初は台湾企業のグローバル化や中国市場進出という題目で、インタビューをしてきました。しかし、台湾企業への訪問を続ける中で徐々に見えてきたもの、それは「日本」との強いつながりでした。もちろん、個々の企業で、「日本の大企業から受注を得ている」「日本から技術を学んだ」といった具体的な理由・つながりがさまざまにあるのでしょう。ただし、筆者は総じて、「日本が大切にされている」と感じました。他の国々の訪問ではなかったような、非常に温かい感情を覚えました。もしかしたら、筆者の個人的な感情も入っているのかもしれません。

 なお、Mechemaの嚴隆財社長は日本的経営を志向する台湾企業に勤務した経験があり、

「われわれ台湾企業は米国企業と日本企業のハイブリッドだ」

とおっしゃっていました。こうした経営者の何気ない一言に、台湾の企業・モノづくりをひも解く鍵があるのではないでしょうか。

 台湾企業のホスピタリティーについてはまた次回取り上げます。(次回へ続く)


筆者注:本稿はJSPS科研費25780243および東京経済大学個人研究助成費13-34の助成を受けた成果の一部である。

Profile

山本 聡(やまもと さとし)

1978年生まれ。機械振興協会経済研究所を経て、2012年4月より、東京経済大学 経営学部 専任講師(担当 中小企業経営論)。

金型や部品加工など、素形材産業を主な対象としながら国内・海外の中小企業の経営体制の変化を解明することを研究テーマとしている。学術論文や書籍に加え、経営者や技術者向けのレポートを精力的に執筆する一方、国内外でさまざまなセミナーの講師も務めている。


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