2014年、進化する家庭用蓄電池とその未来:和田憲一郎の電動化新時代!(10)(2/4 ページ)
家庭用蓄電池市場が大きく伸びている。東日本大震災で注目された非常用電源としての活用のみならず、最近はエネルギーマネジメントの基幹商品としても脚光を浴びている。家庭用蓄電池の有力企業3社への取材から、2014年に大きな発展が期待される家庭用蓄電池の現状とその未来を考察する。
現時点ではイノベーター層の購入にとどまる
次に、シャープから、ソーラーシステム事業本部 新規事業開発推進センター所長である福島隆史氏、同ソーラーシステム事業部システム技術部副参事の山田和夫氏に家庭用蓄電池の現況と将来像についてお話を伺った。
和田氏 家庭用蓄電池の市場動向と、その使われ方について教えてほしい。
山田氏 2013年の市場規模は年間で1万台前後だったのではなかろうか。移動型と据え付け型という2つの製品タイプのうち、今後は据え置き型がメインになってくると考えている。
基本的な使われ方は非常時のバックアップ電源である。特に、ご商売をされている方々で、例えばコンビニ用レジの起動など、事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)のツールとして活用していただいている。さらには、開業医などは、カルテ管理システムを動かすためのバックアップ電源としても活用している。
それ以外でも、深夜電力に電力を貯め、昼間や夕刻に使うなどの使い方が増えている。電力需要のピーク値を抑えることは、ある意味社会正義的な面もあり、受け入れられているようだ。
ただし、現時点ではイノベーター層の購入にとどまっており、費用対効果を検討してというよりも、お客さまの環境貢献やピークカットに対する高い意識から来る需要に支えられている。
和田氏 家庭用蓄電池の電池容量は将来どう変化していくのか。
山田氏 現在の市場は実効容量として5kWh前後がメインとなっている。当社は2.4kWhと4.8kWhの2品種をそろえているが、4.8kWhの品種を選択するお客さまが多い。太陽光発電システムを数多く販売してきた実績から積み重ねた、一般家庭の平均的な使用電力量に対する知見を基に、電池容量の仕様を4k〜5kWhの間で決めた経緯がある。電池容量については、当面このレベルが主力品種になるのではと思っている。
福島氏 最近は、「創エネ、蓄エネで快適生活」がキーワードになってきている。例えば、従来は400l(リットル)が一般的だった冷蔵庫の容量が、600l、さらにそれ以上へと大型化したように、家庭用蓄電池の電池容量も、もしかすると上振れするかもしれない。またユーザーの心理として、他社と比較して、kWh当たりの単価がお値打ちであれば、少し容量の大きいタイプを選択することが考えられる。
山田氏 家庭用蓄電池は、サイズや設置のフレキシブル性も重要な要素となっている。当社では、できる限り奥行きを取らないような薄型形状にした。使用環境温度としては、0〜40℃を想定しており、それよりも寒くなる地域ではガレージの中など温度が0℃以下にならない場所に設置するように勧めている。
和田氏 家庭用蓄電池の電池特性はどのように進化していくのか。
山田氏 当社は電池特性、特に寿命の面を重視し、充放電サイクルが8000回以上に達しても、電池容量が初期の70%以上を確保できる電池セルを採用している。またお客さまへの保証としては、引渡し日から10年間、初期容量の60%以上を無償保証の条件にしている。これは、住宅などの保証期間が長く、太陽光発電システムも10年と長いことから、これらに合わせたものだ。ただし、太陽光発電システムについては、保証期間をさらに延長する取り組みもあり、シャープでも15年保証を準備している。今後、家庭用蓄電池もより長期の保証の仕組みを準備していく必要がある。
和田氏 将来の家庭用蓄電池が目指す姿や課題とはどのように考えるか。
福島氏 家庭用蓄電池は、エネルギー消費量を実質的にゼロにできる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のキーデバイスになると考えている。つまり、自分で作った電気エネルギーを自分で使うという考え方である。近い将来、家庭用蓄電池だけでなく、EVも移動可能な蓄電デバイスとして広がるかもしれない。電力を貯めるデバイスは複数あってもよいのではなかろうか。
また今後は「電気予報」のようなものも利用されるようになるだろう。例えば、午後からの日照状況から発電量を予測し、どこにどう蓄えるかを考え、家族のスケジュールによる管理、学習効果など、ICTと組み合わせて最適なエネルギーマネジメントを行うことができるようになる。
まだ家庭用蓄電池ビジネスは始まったばかりであり、その普及率も1000軒に1軒程度。これから大きく伸びていくと推察される。新しいスマートグリッドのスタイルであり、地域によってまだ普及度合いに差はあるものの、これからも「安心」を売っていきたい。
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