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3DプリンタやCADの2013年ってどうだった?3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(30)(2/2 ページ)

2013年は、まさに「3Dプリンタ」の話題で持ちきりだった。さて今後、このブームは一体どうなっていくのか。3D-GAN理事が、3次元データまわりの1年を振り返った。

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2013年の3次元CAD

 昨今、クラウド自体は珍しいものではなく、もはや日常と言ってもよいでしょう。私の場合、ファイルのバックアップや、見積書、請求書の発行をはじめとして、気がついたら、自分が使用している多くのソフトウェアが何らかの形で、クラウドベースになりました。またソフトウェアは月額使用料ベースで使用する形になってきています。

 3次元CADについては、月額利用料ベースでの利用はまだまだ先かなぁと思っていたら、以前の記事でもご紹介した通り、オートデスクとシーメンスPLMソフトウェアが本格的に月額レンタルサービスを開始しました(関連記事:「レンタルのメカCADってどう思いますか?」)。ただ、金額的に「月々払いやすい金額なのか」というと、正直疑問なところはあります。とはいえ、このあたりの動きは加速することはあっても、止まることはないのではないかと思います。

 オートデスク CEOのカール・バス氏は、「クラウド・ソーシャル・モバイルは避けられない」と企業としての方向性を明確に打ち出しています。


オートデスクのクラウドサービス「Autodesk 360」

レンタル3次元CAD「Fusion 360」

3次元データの民主化を

 モノづくりがもっと小規模で小回りがきく形でできるようになるためには、さまざまな環境の整備が必要です。そのうちの1つが、間違いなく「3次元データ作成の民主化」です。そのための両輪は、「データを作ることのできる人を増やすこと」と「使いやすくて、入手しやすいソフトの存在」。要するに、本格的なソフトウェアがいつまでも高止まりしているようでは困るわけです。

 多くのソフトウェアは当初、ハイタッチな営業によるエンタープライズ的な売り方からスタートして、徐々にコモディティ化していきました。3次元CADも同様に、エンタープライズ的売り方から、もっとコモディティ化し、さらにはクラウド化していけば、「ダウンロードして、ちょっと試して、良さそうなら継続して使う」というスタイルが定着して、もっと違う世界が見えてきそうです。

 現状では、3次元CADがそのような形で販売されるようになっても、DropboxやEvernoteのようなことにはならないでしょう。DropboxやEvernoteは、「自分の作成したファイルや画像、動画などのさまざまな情報をクラウド上に保存すること」が主な目的なので、PCを使うことができる人なら誰にでも日常の作業の延長で行えて、手軽に始められます。しかし3次元CADの場合、自分自身で3次元データを作るわけですから、世の中に、試してみたい人や、そもそも試せるだけのスキルがある人の絶対数が少ないのが現状です。ただし、前述したように、小さい時から3次元モデリングに慣れ親しんでいたとしたらどうでしょうか。そうであれば、決して荒唐無稽な話とも思いませんね。

 2014年は、CADベンダーから、もっとユーザーサイドで希望を持てる動きが出てほしいな……、という手前勝手な希望を抱くとともに、自分のアクションとしては、使い手を増やしていける活動をしたいと思っています。

プライベートなモノづくり

 いろいろと希望ばかりを書いていますが……、この1年で、少なくとも“データを作れる人”にとっては大きな変化が起きていると思います。「プライベートなことに業務のCADを使うわけにはいかない」という人向けには、現在は無償の、しかもかなり使えそうなCADがいくつかあります。

 そして、まだ業界関係者が中心ですが、「クラウドファンディング経由で、自宅用に3Dプリンタを購入し、いろいろ出力してみる」という人も私のFacebookの友達周辺でお見掛けするようになりました。何を隠そう私自身も、この週末に、自宅の日曜大工で「AFINIA」で出力した造形物を使いました。

 仕事としてモノづくりに携わっているからといって、必ずしも皆、自分の作りたいものを日々作っているわけではないと思います。むしろ、そんなことの方が少ないのではないでしょうか。

 CADベンダーの人たちは、CADは売っているものの、「自分の手で、(趣味も含めて)CADで作ったデータを実際に形にする」ということは、これまでほとんどなかったと思います。そもそも、やろうと思っても、手間的な意味でもコスト的な意味でもハードルが高かったですから。

 安価な3Dプリンタや3次元CADは、モノづくり関係で働く人たちに、「モノづくりをあらためて、“自分の手元に”引き寄せる」良い道具になりはじめたかもしれない。そんなことを感じた1年でもありました。


 さてこの連載ですが、気がついたら今回で30回目でした。引き続き雑文を積み重ねつつ、読者の皆さんが楽しめるお話を続けていければと考えております。

 それでは、皆さん良いお年を! 来年も元気でお会いしましょう!!

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。マルチ・ディメンション合同会社社長。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。



編集部からお知らせ:審査員に水野操さん

 MONOistでは、3Dプリンタ/3Dデータという“新たな文化の波”を牽引するとともに、日本のモノづくりの発展を応援すべく、3Dモデリングコンテストを開催いたします。詳しくは、イベント告知サイトをご覧ください。

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