重要度を増すLAオートショー、「マカン」や「WRX」などワールドプレミアも充実:LAオートショー2013(3/3 ページ)
「東京モーターショー2013」とほぼ同時期の開催となった「LAオートショー2013」。ポルシェの中型SUV「マカン」や、メルセデス・ベンツの「AMG ヴィジョン・グランツーリスモ」、スバルの「WRX」など、東京モーターショー2013の向こうを張って22台のワールドプレミアが公開された。
GMは中型ピックアップ「コロラド」が注目
東京モーターショー2013に出展しなかった米国の自動車メーカーは、当然のごとく、LAオートショー2013には勢ぞろいしていた。
GMの「シボレー」ブランドからは中型ピックアップトラック「コロラド」が登場。米国のピックアップトラック市場では、同じくシボレーブランドの「シルバラード」やFord Motor(フォード)の「F150」といった大型の車種が主流だが、最近の燃費規制の強化もあって、中型車種の販売を強化したいという意図が自動車メーカー側にある。まだ小さな市場ではあるものの、中型ピックアップトラックで大きなシェアを占めるのがトヨタ自動車の「タコマ」だ。若者を中心に人気を集めている。
コロラドは、タイで生産されているいすゞ自動車のピックアップトラック「D-MAX」の姉妹車ということもあって、ディーゼルエンジン仕様は良好な燃費で定評がある。今回、LAオートショー2013で発表したのは、最高出力142kW(193ps)/最大トルク253Nmを生む排気量2.5lの直列4気筒ガソリンエンジンと、最高出力222kW(302ps)/最大トルク366Nmを発揮する排気量3.6lV型6気筒ガソリンエンジンを搭載する2モデル。両モデルとも6段変速の自動変速機(AT)との組み合わせがある他、排気量2.5lエンジンモデルにのみ6段変速MTが用意される。駆動方式は全モデルで2WD/4WDの両方が用意される。
近い将来、排気量2.8lの直列4気筒ディーゼルエンジン「デュラマックス」の導入も予定されている。価格は未発表だが、競合車種であるタコマが1万7875米ドル(約184万円)から、日産自動車の「フロンティア」が1万7990米ドル(約185万円)からなので、これらに対して競争力ある価格での導入が期待される。
フォードの最大のトピックスは、2013年12月5日に新型「マスタング」を発表することだったが、LAオートショー2013の会場では残念ながら実車展示はなかった。会場内で目を引いたのは、「コカ・コーラ」のペットボトルをかたどった木のオブジェと、2013年前半に発表したプラグインハイブリッド車(PHEV)「フュージョン・エナジー」が並んで展示されていたことだ。
フュージョン・エナジーは、中核セダンの「フュージョン」のPHEV版で、燃費はシティモードで約46km/l(108MPGe)という良好な燃費が特徴。トヨタ自動車の「プリウスPHV」の燃費を約2km/l(5MPGe)上回っていることを高らかにうたう。LAオートショー2013の展示では、フュージョン・エナジーにコカ・コーラのペットボトルと同じ、エコ素材を使った内装を導入したことをアピールした。なお、コカ・コーラでは、材料にサトウキビ由来のバイオプラスチックを30%混ぜたペットボトルを採用している。
中型SUV「エッジ」は日本未導入。水平基調のデザインに丸みを帯びた細部を与えて、欧州風のスタイリングに仕立てている。その他、米国の人気レースゲーム「ニード・フォー・スピード」仕様のマスタングも注目を集めていた。
LAオートショーの名物の1つに、会場外で開催されているグリーンカー試乗会がある。ここでは、カリフォルニア州だけで販売されているフィアットの電気自動車(EV)「500e」、LAオートショー2013には出展していないTesla MotorsのEV「モデルS」など、ZEV(Zero Emission Vehicle)規制のあるカリフォルニア州らしいモデルが目にとまった。
オレンジのボディが目に鮮やかな500eはフィアットの「500」のEV版。ZEV法対策としてカリフォルニア州限定で販売されている。注目点は、カリフォルニア州内で最も安く借りられるEVであることだ。3万ドル(約309万円)超の車両価格は高く感じるが、リース価格は1カ月当たり199米ドル(約2万円)という破格の設定である。Chryslerの「ジープ」ブランドのSUV「グランドチェロキー」に追加されたばかりの排気量3lディーゼルエンジンモデルにも記者の列が並んだ。
ワールドプレミアの数は、東京モーターショー2013が76台、LAオートショー2013が22台。次世代車や軽自動車、超小型モビリティなども含めて大量のワールドプレミア数を誇った東京に対し、ロサンゼルスは厳選されたモデルが登場。マジメで技術志向の東京、華やかでエコなロサンゼルスといった個性が際立つ結果になった。
筆者紹介
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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