新市場をつかめ! 勝負を分ける3Dプリンタ特許〔後編〕日米欧企業の特許出願傾向は?:知財コンサルタントが教える業界事情(17)(2/3 ページ)
3Dプリンタの普及のカギを握る「特許」の存在を、知財と企業戦略の専門家が読み解く本連載。3回目となる今回は、日米欧企業の3Dプリンタに関連する特許の出願状況について解説します。
CPCを用いた、3Dプリンタ分野の世界的な特許出願状況
EPOの特許データベース「Espacenet」での検索を試みたところ、欧州特許と米国特許に対する、CPC「B29C67」の付与が順調に進められていると判断できます。そこで、3Dプリンタ分野の欧米主要企業の特許出願状況をEspacenetで調べた結果が表2です。*)今回取り上げた欧米主要企業は、3D Sysutems(米国)、Phenix Systems(フランス、2013年6月12日に3D Systemsが買収)、Stratasys(米国:イスラエルObjetと2012年12月3日に合併)、Optomec(米国)、EOS(ドイツ)、ExOne(米国)、EnvisionTEC(ドイツ)、Voxeljet(ドイツ)の9社です。
*) Espacenetの検索機能的制約から、ファミリー特許と見なすべきもの全てまでも、単純に各1件と数えています。
注1) 2013年6月12日、3D SystemsがPhenics Systemsを買収、注2) 2012年12月3日、StratasysとObjetが合併、注3) StratasysとOptomecは共同開発、注4) EOS(Electro Optical Systems)、注5) ExOneの沿革
表2から、今回取り上げた9つの企業について以下のことが分かります。
- 各社とも、自社が技術的強みをもつ分野での特許出願件数が多い。
- 3D Systems(米国)がPhenix Systems(フランス)を買収した狙いは、自社特許件数の少ない分野の技術的強化であると考えられます。
- Stratasys(米国)がObjet(イスラエル)を合併した理由は、「犠牲物を用いた可動構造物の作製」で、3D Systemsに対抗できる技術を確保する狙いがあると考えられます。*)
- 業界の動向を踏まえると、3Dプリント用材料については、先行企業(3D Systems、Stratasys)は、「樹脂」や「造形を容易にさせる添加物を含む材料系」だけでなく、「金属材料」へ「食料」への取り組みを行っています。
- 一方で、後発企業は材料について、最初から「金属材料」や「食糧」などを狙って参入するケースが多いことが分かります。
*) 半導体の製造プロセスを応用する、MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)では、犠牲層エッチングを活用して「可動構造」や「薄膜構造物」の製作が可能です。それと同様に3Dプリントでも、犠牲物を活用すれば「可動構造」や「薄膜構造物」の製作が実現できます。
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