自分のために起業はするな!:心技隊流「未来を創るヒント」(2/2 ページ)
起業家でもある心技隊 事務局長いわく、「起業はするな」。でも起業家は増えてほしい。ではどうしたらいいの!?
だけど……、起業家は増えた方がよい
こんなことを書いておきながらも、やっぱり日本を元気にするためには、起業家が増える方がよいとも思っている。
それでは一体、どうすればいいのだろうか?
それは「起業することが目的」ではなく、もっと「大きな夢を達成するための手段」として創業できるマインドを持った人を育てる必要があるのだと思う。どんなに大きな津波に襲われようが、不屈の精神でそれを乗り越える理念を持った起業家魂を持った人間を!
先日見たテレビ東京の「カンブリア宮殿」の最後でこんな言葉が流れていた。EvernoteのCEO フィル・ルービン氏は「お金が欲しい、偉くなりたい、自由が欲しい、そんな理由だったら起業すべきではない」と言った。彼によると、起業の唯一の正統な動機は「世界を変えたい」と言うことらしい。
まさに、その通りだと思う。
手前味噌になるが、私も社長になりたいから起業したわけではない。
商社営業というスキルを生かし「製造業の役に立ちたい」「社会から必要とされる企業を作りたい」と言う理念でスタートし、今もその気持に全く揺らぎはない。
世の中に埋もれる素晴らしい技術を、多くの方に知っていただきたい。商社営業というスキルを生かし、さらなる飛躍を目指されている企業の役に立ちたい。働く意欲にあふれている人が、働きやすい環境を提供できる組織を作りたい。雇用や納税を通じて、社会に貢献し、社会の役に立てる会社に育てていきたい。そしてこれを具現化するために、さまざまなことに取り組んでいる。やり過ぎな感はあるけれど。だから、大したスキルがないにもかかわらず、どうにか今まで生きてこれたのだと思っている。
正直言えば、お金だって欲しいし、名誉欲がないわけでもない。しかし今は、それよりも「理念を貫く」ことの方が上回っている。
なので、どうしても起業したいという人は、事業計画を立てるときに、「その事業を通じて社会に何をもたらすのか」も、一緒に考えてほしい。多分、それがない人はどんな業種であっても続かないんだと思う。
自分の回りにいる経営者を見ていて、それだけは間違いないことだと断言できる。
そして、起業に向け行動する前に、多くの経営者から話を聞く機会を持った方がいい。どんな指南書にも書かれていない、本当の経営についてのヒントをもらえるだろう。これは、お金を払ってでもやった方がいいと思う。絶対に必要なことだと思う。
私は運よく、仕事を通じてさまざまな経営者の方から薫陶を受けた。起業後も、さまざまな先輩経営者に叱咤されながら経営の基礎を学ばせていただいた。それが、今の自分を支えてくれている。
まさに、今は時代の変化点であり、この変化点で自分がどんな形で世界を変えていけるのか? 世界なんていう大きなものじゃなくてもいい。自分の関わる仕事を通じてそこの携わる人が「便利だね」「使いやすくなったね」「こんなの欲しかったんだ」「楽しいね」――なんでもいいから、今までと違う何かを感じてもらえるような仕事を作り出せればよいと思う。
先日、社内ミーティングでこんな話をさせてもらった。
なぜディズニーランドは、他の遊園地よりも高い金額でもリピーターを呼び込めるのか? それはゲストを心から「おもてなし」するキャストがいるから。われわれの仕事は、お客さまに対しても、協力会社に対してでも、キャストの立場でなければならない。
お客さまに対しては当然これができているだろうが、協力会社に対してはどうだろうか? ときに、自分がゲストだと思って接してしまっていることはないだろうか? エムエスパートナーズの社員は、常にキャストであり続けなければならない。
それが、商社という立場でお金をいただけることにつながるし、必要とされ続けるために必要な1つの姿勢であると思う。
これは、どんな仕事・職種にも通じることだろう。
「お金をいただく」ということは、そこに何らかの付加価値がなければ存在する意義がない。商社という仕事を通じてお金をいただくには、どんな付加価値が望まれているか真剣に考えて欲しい。そんな話をさせてもらった。
起業を目指す皆さん、その仕事に他社にはない付加価値はありますか?
「おもてなし」の気持ちはこめられていますか?
それが見出だせないのであれば、起業するのは止めた方がよい。創業10年を目の前にリアルにもがき苦しんでいる経験者は、そう思う。
Profile
伊藤 昌良(いとう まさよし)
1970年生まれ。2004年に株式会社エムエスパートナーズを創業。加工部品専門の技術商社として、アルミ押し出し形材をはじめ切削加工部品やダイカスト製品などを取り扱う。「役割を果たす技術商社」を理念に掲げ、組み立てや簡易加工を社内に取り込みながら、協力会社と共に一歩前へ踏み出す営業活動を行っている。異業種グループ「心技隊」事務局長。「全日本製造業コマ大戦」の運営でも事務局を努め、製造業界に必要とされる活動を本業の傍ら日々取り組んでいる。
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