「GT-R NISMO」はNISMOブランドの旗艦車種、最高出力は「GT-R」比10%増の441kW:時速300km超でダウンフォースが+100kg
日産自動車は、NISMOブランドのフラッグシップとなる「GT-R NISMO」を、2014年2月末に国内発売する。エンジンの最高出力は、NISMOの専用チューニングにより、GT-Rの404kWから約10%増の441kWとなっている。量産車でニュルブルクリンク北コース最速を記録したタイムアタックの様子も映像で公開されている。
日産自動車は2013年11月19日、スーパースポーツカー「GT-R」をベースに、同社のモータースポーツブランド「NISMO」のレーシングカー技術を融合した「GT-R NISMO」を2014年2月末に国内発売すると発表した。価格は1501万5000円。
日産自動車は、NISMOの技術を組み込んで高性能化した車両を「NISMOブランド」として展開している。既に「ジュークNISMO」や「フェアレディZ NISMO」、「マーチNISMO」などが発表済み。GT-R NISMOは、このNISMOブランドにおけるフラッグシップとなる。
GT-Rの排気量3.8l(リットル)のツインターボV型6気筒エンジン「VR38DETT」に専用チュー二ングを行い、最高出力を従来の404kWから約10%増の441kWに高めた。最大トルクも同632Nmから652Nmに向上している。また、カーレース「SUPER GT(スーパーGT)」の参戦車両である「GT-R NISMO GT3」にも使われている高効率大容量の専用タービンや、気筒ごとに最適な点火を行う制御に加え、最適な燃料噴射量を実現するインジェクター駆動回路を採用した。
足回り性能については、フロントおよびリヤサスペンションのスプリングと特注のビルシュタインダンプトロニックダンパーを使って、極限状態でも路面に吸い付くようなグリップや正確なステアリング応答性を実現するため専用チューニングを施した。走行中に3パターンのサスペンションモードを選択できる。そして、「レースから着想を得た」(同社)というサスペンション設定を補完するために、ワイドリムフロントホイール(20×10.0J)とサイズアップした専用の高剛性ハブボルト、専用タイヤを採用した。
フロント側のダブルウィッシュボーン式サスペンションは、高速コーナーリング時のホイール位置を最適化し、操縦安定性を向上させるために専用アッパーリンクを採用して、キャスタートレールを拡大した。リヤサスペンションは、コーナーリングや車線変更の際の車体の横揺れを最小化、重量を低減しながらロール剛性を高められる直径17.3mmの中空スタビライザーを用いている。
最高出力の高い車両ではボディ剛性の確保も重要になる。GT-R NISMOは、高負荷時でもサスペンションの精度の高い動作を確保するため、ボディ結合部に通常のスポット溶接に加え構造用接着剤による補強も追加している。「アフターマーケットでは実現できないNISMOによる『ファクトリーチューン』だ」(日産自動車)という。
ダウンフォースを高めながらCd値は0.26を維持
GT-R NISMOでは、GT-Rよりも空力性能をさらに向上するためにエクステリアデザインも改良した。空気の流れを分析する最新のシミュレーション技術を用いて、空気抵抗への影響を最小化しながら、路面追従性を向上させるエアロパッケージが適用されている。
具体的には、フロントにカーボン製バンパーとアンダーカバーのエアストレーキを、リヤにカーボン製のリヤスポイラーを採用した。また、NISMOのモータースポーツ活動での経験を生かし、炭素繊維強化樹脂を、バンパーやリヤスポイラー、サイドシルカバー、アンダーカバーなどに幅広く採用し、軽量化、低重心化を実現している。
時速300kmで走行している際のダウンフォースがGT-Rと比べて100kg増加するなど、高速走行時における車両の優れたバランスを確保できている。ダウンフォースを高めると、空力特性を示すCd値が悪化しやすいが、左右に張り出したフロントバンパーと、後方に延長し絞り込まれた形状のリヤバンパーにより、GT-Rの2014年マイナーチェンジモデルと同じ0.26を達成した。
2014年夏発売の専用オプションパックを使えばニュル最速と同等性能に
GT-R NISMOは、その高い走行性能を示すために、世界で最も過酷な路面状況で知られるドイツのニュルブルクリンク北コースでトライアルを行っている。ラップタイムは、量産車で最速となる7分08秒679を記録したという。
このニュル最速を記録した車両は専用オプションパックを装着していた。この専用オプションパックは、NISMO大森ファクトリーから2014年夏ごろに発売される予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ホンダのF1復帰はハイブリッド化する新型「NSX」投入の布石か
2015年からF1に復帰するホンダ。同社がかつての「マクラーレン・ホンダ」時代に発売したスポーツカー「NSX」も、ハイブリッドシステムを搭載した新モデルとして復活し、2015年から量産される予定だ。 - 幻のスポーツカー「トミーカイラZZ」はなぜEVとして復活を遂げたのか
京都発の電気自動車(EV)ベンチャー・グリーンロードモータースが開発したEVスポーツカー「トミーカイラZZ」が、グランフロント大阪で披露されている。206台しか販売されなかった幻のスポーツカーであるトミーカイラZZは、なぜ同社のEVとして復活したのか。全ては1つの出会いから始まった。 - スポーツカー冬の時代、共同開発は切り札になり得るか
トヨタ自動車とBMWが締結した提携内容には、中型スポーツカーの共同開発が含まれている。この他にも、トヨタ自動車と富士重工業、マツダとフィアット、ルノーとケーハタムなど、スポーツカーを共同開発する事例が増えているが、スポーツカー冬の時代を乗り切るための切り札になり得るのだろうか。