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「プロセス実装」のポイント(その1):機能安全管理プロセス中小サプライヤのための実践的ISO26262導入(4)(2/4 ページ)

中小サプライヤを対象に、ISO 26262に取り組む上での実践的な施策について紹介する本連載。第4回は、第3回で基礎を解説した「プロセス実装」のうち、Part2の機能安全管理プロセスについて掘り下げる。Part4〜6のエンジニアリングプロセスについても、ティア1サプライヤの取るべき対策を紹介しよう。

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機能安全の管理プロセス(Part2)

 Part2は、「機能安全の管理」というタイトルの通り、機能安全開発をする上で管理すべきことを、組織レベル、プロジェクトレベルに分けて、それぞれの要求がまとめられています。組織レベルでは、「安全文化」を中心に、会社としてプロジェクト横断的に取り組まなければならないことが要求されます。次にプロジェクトレベルでは、いわゆるプロジェクトマネジメント的な要求をベースに安全関連特有の要求が加わわります。

図1
図1 安全管理の対象領域

「安全文化」とは

 まず、「安全文化」についてですが、抽象的で分かりにくい要求ではありますが、極めて重要なことが書かれています。具体的には、

「組織は機能安全の効果的な達成を支援し、奨励する安全文化を創出し、育成し、維持しなければならない」

となっています。何となく分かるけど、具体的に何をすべきなのかと考えると非常に困るのではないかと思います。「Safeware」の著者であるマサチューセッツ工科大学教授のNancy Leveson氏は、次のような表現で「安全文化」を説明しています*1)

“産業あるいは組織での安全文化とは、その産業に参加する人たち、すなわち、経営者、労働者、および政府の規制担当者の、安全に対する一般的な態度と取り組みのことである”

*1)「セーフウェア」、Nancy Leveson、翔泳社

 一方、「安全文化」という概念は、IAEA(国際原子力機関)における1991年の提案が始まりと言われています。その定義は、

“原子力発電所の安全の問題には、その重要性にふさわしい注意が最優先で払われなければならない。安全文化とは、そうした組織や個人の特性と姿勢の総体である”

となっています。

 いずれにしても、組織や個人の安全に対する姿勢や取り組みのことを指しているようです。昨今の安全関連の事故報道を見ても、経営者や従業員の安全に対する取り組み姿勢が重要であることが分かると思います。とはいえ、仕組みとして何ができるかを考えると難しい課題です。経営層の強力なコミットメントが最低条件ですから、いかにこの活動に巻き込めるかが鍵になると思います。

 その前提で、“安全文化創出のためのプロセスや社内の仕組み”には何が必要かを考えると、主なポイントは以下のようになると思います。

  • 組織の基本方針・理念の決定
  • 安全に責任を持つ組織の設置
  • 安全関連活動に必要な資源の割り当て
  • 安全関連問題への対応
  • 安全活動のレビュー
  • 継続的なプロセス(仕組み)の改善

 実際に自社のプロセス、仕組みを作る担当者の目線で考えると、後半の3項目をしっかり取り込み、運用可能な仕組みにすることが重要です。前半の3項目は、担当者だけが工夫しても実現はなかなか難しいので、前述したように経営層を巻き込むべきでしょう。

図2
図2 安全な製品作りのための重要要素

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