タイプラスワン戦略におけるラオス、魅力を生み出す「ラーオ語」の価値とは?:知っておきたいASEAN事情(16)(1/2 ページ)
ASEAN内の製造拠点に「タイプラスワン」の動きが高まる中、タイからの移転先として親和性が高いのがラオスだ。製造業の生産拠点先として決して恵まれた環境ではないラオスだが、タイからの技術移転を考えた場合には圧倒的に有利な点があるという。ラオスにはどういう価値があり、またどういうリスクがあるのか。ASEAN事情に詳しい筆者が解説する。
製造業にとって役立つASEANの現状を紹介してきた連載「知っておきたいASEAN事情」ですが、前々回から「タイプラスワン」をテーマに、ASEAN各国の状況をお伝えしています。タイプラスワン戦略とはASEANの生産拠点で広がる考えで、ASEANの中心基地であるタイだけで事業を完結させることがリスクになりつつあるため、タイ以外の拠点を設けようという動きや戦略のことです。
今回「知っておきたいASEAN事情」で取り上げる国はラオスです。
日本からの経済援助を期待
ラオスの正式な国名は「ラオス人民民主共和国」です。恐らく日本の人々にとって東南アジアの中で一番印象に薄い国がラオスではないでしょうか。
フランス植民地からの独立した後、長年にわたる内戦があり、それなりにごたごたのあったラオスですが、大規模な戦争のあったベトナム、ポルポト政権による虐殺行為のあったカンボジア(関連記事:タイプラスワン戦略におけるカンボジア、「残された楽園」に潜む可能性と危険性)の印象が強烈過ぎ、これらの仏領インドシナから独立した他の2カ国に比べると、あまり目立たないのかもしれません。
バンコクの在留邦人向けには、旅行会社がラオスへのパッケージツアーを用意しています。首都ヴィエンチャンへは往路に寝台列車を利用し、復路は飛行機を利用するツアーが人気を集めています。また、日本では全く知名度がありませんが、ユネスコの世界文化遺産に指定されているルアンパバン(ラオスの古都です)も人気の観光地です。
ラオスは東南アジアで唯一、海岸線を持たない国です。その代わり、中国、ベトナム、ミャンマー、タイ、カンボジアの5カ国と国境を接しています。
タイムリーな話題としては、安倍晋三首相が2013年11月16〜17日にカンボジア、ラオスの2カ国を訪問する予定となっています。首相就任1年目で、ASEANの中でも小国である2カ国を訪問することは、とても価値のある外交活動ではないでしょうか。ASEAN地域は歴史的にも華僑と呼ばれる中国系住民が多く、近年では中国との経済的な結び付きが深まっていますが、一般国民レベルでは、日本からの経済援助を期待する声が根強くあります。
2013年1月に法定最低賃金を引き上げ
アジア地域の発展途上国の常として、経済統計の数字と実経済には隔たりがあります。また、都市部と農村部の格差が大きく、統計数字(平均値)だけを見ると、その国の実態が見えてこないことが多々あります。
しかしこのところのASEAN域内の流行でしょうか。2013年1月1日に、法定最低賃金の引き上げがあり、月額約44ドルから約80ドルに変更されました。引き上げ率はかなり大幅で、国内事業者からは大きな反発が出ています。しかし、それでも月額約80ドルと言うのはかなりの低賃金レベルと言えます。
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