カーボンナノチューブの取り扱いマニュアルが完成、NEDOなどがWebサイトで公開:実装ニュース
NEDOと単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)、産総研の3者は、カーボンナノチューブを取り扱う事業者などが安全性試験や作業環境計測を行う際の参考資料をWebサイトで公開した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)、産業技術総合研究所(産総研)の3者は2013年10月29日、カーボンナノチューブ(CNT)を取り扱う事業者などが安全性試験や作業環境計測を行う際の参考資料をWebサイトで公開した。
NEDOの「低炭素化社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」で開発した測定・試験方法をまとめた文書で、「カーボンナノチューブの安全性試験のための試料調製と計測、および細胞を用いたインビトロ試験の手順」と「カーボンナノチューブの作業環境計測の手引き」の2つがある。これらは、「カーボンナノチューブの安全管理に関するレシピともいうべきもので、事業者などの自主安全管理を支援し、CNTの応用開発の促進に貢献する」(NEDO)という。
「カーボンナノチューブの安全性試験のための試料調製と計測、および細胞を用いたインビトロ試験の手順」は、動物試験よりも簡易で迅速な安全性評価方法として知られる細胞のインビトロ試験をCNTで行うための手順をまとめたものである。
(1)CNTを安定に分散させる調製方法、(2)適切な計測技術によるCNTの特性評価(粒子径や濃度など)、(3)吸入暴露による呼吸器への健康影響を想定した細胞を用いたインビトロ試験、から構成されており、具体的な実施例も付属している。なお、この手順書はCNTの呼吸器への影響を評価するもので、安全性全てを保証するものではないという。
「カーボンナノチューブの作業環境計測の手引き」は、CNTを取り扱う作業環境で気中に飛散したCNTの定量方法についてまとめた手引書である。計測手法としては、(1)エアロゾル計測器、(2)炭素分析などによる定量分析、(3)電子顕微鏡観察について、それぞれの詳細と長所/短所、有用性などをまとめている。現実的なCNT濃度の計測方法の一例として、年に数回炭素分析を実施し、日常的なチェックは小型で簡易なエアロゾル計測器で行うといった、状況に応じた使い分けの提案も行っている。
今回公開した2つの文書は日本語版となっているが、2013年度末までには英語版も公開する予定だ。
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