再生可能エネルギー業界への転職――「社会貢献したい」という熱意と企業戦略を理解する冷静な分析力が重要:製造業界別に考える転職活動、成功のカギ
世間からの注目も集まり、好況な再生可能エネルギー業界。同業界への転職を志す人に知っておいてほしい「転職を成功させるためのポイント」を、ジェイ エイ シー リクルートメントの橋本紘樹氏に聞いた。
本記事は人材紹介会社「JAC Recruitment」橋本紘樹氏からの寄稿です。
かつてないほど転職者が有利な再生可能エネルギー業界
転職を検討中の方にとって、再生可能エネルギー業界は、かつてないほど有利な状況です。土地開発、経営企画、施工管理、運営管理、ファイナンス、強電設計、プロジェクトマネージャー等、太陽光発電に関わるさまざまな職種で、積極的に人材を募集しています。
これまでは太陽電池モジュールなどのメーカーや発電所などの施設を建設・運営する事業者の求人が中心でしたが、最近になって水道光熱費の経費削減サービスを手掛けるESCO事業者や住宅/ビルのエネルギー管理システムを提供するHEMS/BEMS事業者などの節電関連事業者の求人が盛んになってきています。
職種としては、今後も電気(強電)系のエンジニアは引く手あまたでしょう。発電関連の企業では発電所の運営に当たる「電気主任技術者」、節電関連の企業では電気関連の知識・経験を持った「セールススタッフ」「電気工事施工管理技士」等の人材は、好条件で転職できる可能性が高いです。
成功のカギは「社会貢献への思い」「冷静な現状理解」「急成長に対応できるスピード感」
再生可能エネルギー業界への転職を志して成功するには、「社会貢献をしたいという強い志」「冷静な分析・現状理解」「業界の成長に対応できるスピード感」が必要になります。
「社会貢献をしたいという強い志」「冷静な分析・現状理解」
再生可能エネルギーに寄せられる世間からの期待は大きく、この業界に飛び込もうと考えている方の中にも「社会に貢献したい」という動機を持って、この業界を志される方が多いです。
転職者側が有利な業界ではありますが、実は「社会貢献」という思いだけで面接に臨まれる方は成功率があまり高くありません。企業にも「社会貢献」という思いはあるものの、ビジネスとして成り立たなければ事業を継続することはできません。各企業がどのような戦略を持って事業を展開しようとしているのか、各社の戦略と自分の夢・思いはどこが一致してどこが食い違っているのか、自分の持っている能力・経験は各社の戦略の中でどのように生かしていくことができるのか。各社の戦略を冷静に分析した上で、志望理由を語れるように準備しておく必要があります。
厳しいことを言うと、夢を持って飛び込んでくる方が多い分、企業側の考えと自分の夢・思いとのズレが大きいと、「こんなはずではなかった……」と大きな失望を感じてしまう業界でもあるのです。業界に対する興味だけでなく、「この企業に入ると、自分のどんな夢・思いを実現できるのか」とはっきり理解した上で面接に臨みましょう。自分の考えをしっかりと伝えられる方は希望どおりの転職を実現して、転職後も満足できるキャリアを歩まれています。
「業界の成長に対応できるスピード感」
再生可能エネルギーの市場規模は、10年後には50兆円規模になると予測されています。けれど、まだまだ課題はたくさんある状況です。会社組織の変化が激しいので業務外のことに時間を取られる場面も出てきますし、「自分の業務はこれ」と自分で決めていても「この業務もやって」と本業以外の関連業務を頼まれることもよくあります。
ですから、「目先の課題や決められたことに対して、自分のペースで進めたい」という人よりも、「将来起こり得ることに思いを巡らせながら、日々変化する環境を楽しんでチャレンジしたい」という人の方に向いている業界と言えるでしょう。企業側もチャレンジを楽しめる人材を求めています。
国策の影響が大。事前に学んでおくことで転職活動も有利に
現在は国の政策によって活況ですが、反面、国の政策の影響を受けやすい業界とも言えます。各企業の戦略・動向だけでなく、電力の買取価格、太陽光(風力)発電所建設における課題など、再生可能エネルギーに関する政策の状況についても勉強しておくと転職活動をする上で有利になるでしょう。
プロフィール
橋本 紘樹(はしもと ひろき)
ジェイ エイ シー リクルートメント Energy Infra Plant Team Manger
2009年JAC Recruitmentに入社、再生可能エネルギー市場の採用が活発になる前から、先駆けて業界のネットワークを築いている。大手企業から外資系企業の立ち上げまで、多数のクライアントと転職者を結び付けることで、業界の成長をサポート。現在では、Energy Infra Plant Team Manager として、エネルギー業界(再生可能エネルギー、電力、石油業界、プラントエンジニアリング)を採用の側面から支援している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.