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製造業の米国回帰を後押しする“4つの波”とは?JETROに聞く(2/3 ページ)

日本からは中国やASEANなど低コスト国への工場の流出が続いているが、同じ高コストの先進国である米国では工場を米国内に戻す動きが増えているという。早くに製造業の空洞化が指摘された米国で何が起きているのか。JETRO海外調査部北米課に聞いた。

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TPPなどFTAを生かした輸出拠点へ

 2つ目のポイントが、FTA(自由貿易協定)の整備が進み輸出拠点としての米国の魅力が高まっている点だ。米国では2012年3月に韓国とのFTAが発効。現在交渉中のEUとのFTAやTPP(環太平洋パートナーシップ)なども含め、関税なしで輸出できるという環境が整えば、米国を製造・輸出拠点として活用する利点が生まれる。

 実際に米韓FTA発効後は、トヨタ自動車やホンダ、三菱自動車などの日系大手自動車メーカーが米国での生産増強などを行い、韓国向けの米国からの輸出を増やしたという実績もある。

 吉田氏は「米国の輸出額の20%以上が在米外資系企業によるものであり、その比率は年々高まっている。FTA網の整備は外資系企業の誘致にもつながり、ひいては輸出増にも貢献している」と国家間協定の利点を強調する。

シェール革命が化学産業を呼ぶ

 3つ目のポイントがシェール革命の影響だ。頁岩(シェール)層に含まれた天然ガスや石油は古くから認知されてきたが、従来は採掘費用が生産に対して見合わなかった。しかし2000年代に入り採掘技術が進化したため低コストでこれらの天然ガスや石油を取り出せるようになり、急速に生産が拡大した。これがシェール革命だ。米国には豊富な埋蔵量があるとされ、従来の石油などエネルギー産業のバランスを変えるといわれている。

 「米国ガス協会の話ではエネルギー産業の米国回帰は明確な動きとなっている。石油化学産業だけでなく、掘削機械やパイプライン建設などのインフラ関連など、影響を受ける産業の幅は広いだろう」(吉田氏)。

 実際に生産が増大する中、石油化学や繊維など関連産業を呼び込むきっかけとして注目を集めている。生産地であるテキサス州やペンシルバニア州には多くの石油化学関連企業が進出。シェールガスは米国の年間の天然ガス消費量の100倍以上が埋蔵されているとされており、石油化学産業の新たなサプライチェーンが生まれると見られている。

3Dプリンタをはじめとするモノづくりの革新

 4つ目のポイントとなるのがモノづくりの革新だ。3Dプリンタやレーザーカッターなどデジタルデータを基にした新たなモノづくりは、クリス・アンダーソン(Chris Anderson)氏の著書「メイカーズ」などでムーブメントを呼び起こし、広がりを見せている。大量生産には向かないが、固有のニーズを捉える少量生産の新たな形として注目を集めている。また大量生産の現場でもロボットの活用により、人件費を抑制した形で効率的な生産方法を実現できるようになってきている。

 「オバマ政権の後押しもあり、デジタルマニュファクチャリングの新たな流れは着実に広がっている。また生産手法そのものの革新も進んでいる。中国などで生産していた手法そのものを米国に戻しても、有効だとはいえない。新たなモノづくりを伴う形で戻すことで初めて意味が出てくる。ある意味では工場の米国回帰の流れはモノづくり革新とセットで考えるべきものだ」と吉田氏は指摘している。

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