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ワクワクする心が燃料となる リーン・プロダクトアウトとは?マイクロモノづくり概論(2)(1/2 ページ)

消費者のニーズに基づいてモノづくりをすることが、マーケットインであり、従来の製品開発では主流だった。今、中小企業の製品開発で目指すべきなのは、その逆の考えだ。しかもリーンなプロダクトアウトだ。

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マーケットインかプロダクトアウトか

 一般に、大手メーカーが製品開発する場合、まず製品ニーズの仮説を構築し、そのようなニーズが消費者の中にあるかどうかを確かめるために精緻なマーケティング調査を実施する。そのデータを分析した上、少しずつ製品の仕様を固めていき、製品を作り上げるのが一般的である。そのような、消費者視点で、消費者のニーズに基づいてモノづくりをする製品開発を「マーケットイン」と言う。

 1970年代に入り、このマーケットインのモノづくりは急速に普及した。大量生産・大量消費のモノづくりのほとんどがマーケットイン方式で作られているといっても過言ではないほどになった。

 一方「プロダクトアウト」とは、あくまでも「作り手側の思いを優先してモノづくりを行うこと」である。簡易な市場調査は行うものの、作り手が一番のユーザーとなり、作り手が使いたいものを、作り手側の視点で作り上げる方式である。

 マーケットイン方式のモノづくりが急速に発展した結果、プロダクトアウト方式のモノづくりは、「市場を見ずにモノづくりする」という意味において、「目隠しをして、ダーツの矢を的に目がけて投げている」ようなものであり、現代のマーケティング理論の中で製品開発における典型的な失敗例として批判され続けてきた。

 しかし今般、日本のメーカーの中でも、壮大なマーケティング費用と開発費を掛けた製品開発でも、いざ市場に出してみたら全く売れず、大量の在庫の山を抱えて失敗をする事例が増えてきているが、その理由は何か?

 私なりの解釈だが、もはやマーケットイン方式の製品開発手法では、めまぐるしく変わる市場のニーズにはついていけていないのではないかと考えている。社会現象として表面的に計測可能な、表面的なニーズデータで多大な費用を掛けて製品開発をしても、そのような表面的ニーズはすぐに変化してしまうため、製品を市場に投入したときには、既に旬が終わっているという仮説である。

 また、マーケットイン型の開発では、ユーザーのニーズの最大公約数を取って、製品化しようとするために、一般的には不要と思われる機能などがてんこ盛りになり、製品のコンセプト自体がブレて、分かりにくいものになってしまうのである。

 今回紹介したいマイクロモノづくりの概念は、「リーン・プロダクトアウト」である。有名な「リーン生産方式」の「リーン」(省エネ型の)の要素があるプロダクトアウトということだ。

リーン・プロダクトの「リーン」とは?

 リーン・プロダクトとは開発リソースを極力社内の手持ちのリソースだけに限定したプロダクトアウト型の自社製品開発である。

 さて、リーン・プロダクトアウトのどこが「リーン」(省エネ)なのだろうか?

 一般的に自社製品開発といえば、膨大な開発費用が掛かるというイメージの方が多いのではないだろうか? 確かに、これまでの自社製品開発の手法をそのまま使って開発した自社製品は膨大な開発費用が掛かっていた。

 なぜなら、自社の本来持っているノウハウや技術や、自社の本来持っている設備を超えた製品開発をしようとするからだ。そうすることで、外部に対してリソースを求め、多額の資金を社外に流出することになってしまう。

 しかし、開発に膨大なコストをかけてしまえば、長い時間をかけた継続的な製品開発ができない。なぜなら、一般に自社製品開発において、自社(自分)の持っている技術やリソースを超えたモノづくりをしようとするために、自社内部で対応できないモノづくりに関して、外部に外注費として資金を流失してしまうからである。

 最も分かりやすい事例は、過去記事「100年後も事業継続するには笑顔! バネ屋さんのアート」の中で紹介した、バネメーカーの五光発條の村井秀敏さんが開発した新感覚の金属バネブロック「SpLink」(スプリンク)である。開発者である村井さんは、このSpLinkの製品開発において、自社のリソース以外を使うことなしに製品開発したのである。


SpLinkによる作品

 バネブロックの開発には、村井さんが自らの「ワクワク」と「自社の持っている技術」を掛け併せて発想している。既存のバネの製造装置はそのまま使い、材料も従来の量産用バネ材で、設計を変えただけで完成させたのである。

 つまり、新しい設備は一切導入せず、外注を使うこともなく、そのまま実現したのである。継続して行える製品開発こそ、成功する自社製品開発である。そのためには、極力外部への資金流失を避ける必要がある。つまり、自社の持っている設備、自社の持っている技術、自社の持っている人員の範囲の中でリーンな(省エネ型)の自社製品開発を行う必要があるのだ。

 そのような場合、開発の資源が限られているので、小粒な自社製品開発にならざるを得ないが、最初はたとえ小さくても、「生み出すこと」そのものの方がはるかに重要である。まず小さく生み出し、その後は試作回数を重ね、徐々に大規模な製品にしていくという考え方をする。

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