「えー!? 何で、それできないの?」が解消された「SolidWorks 2014」:ソリッドワークス・ジャパンの新製品発表
ミッドレンジ3次元設計システム新製品「SolidWorks 2014」の日本向け製品発表会が開催された。本記事では注目しておきたい新機能のいくつかを紹介する。βコンテストに参加した日本人ユーザーのコメント付き。
ソリッドワークス・ジャパンはミッドレンジ3次元設計システム新製品「SolidWorks 2014」の製品発表会を開催した。同社のプライベートイベント「SolidWorks World 2013」(会期は現地時間で2013年1月20〜23日)でも(おばか製品とともに)発表された新機能の一部の詳細が明らかになった。国内での販売開始は2013年11月1日。
SolidWorks 2014について、β版コンテスト(SolidWorksのβ版評価)の日本人参加者の声をまとめると、以下だという。
- とにかく使いやすくなった
- 頻繁に使う機能の強化が多数である
- システムが安定している
特に好評だったのは、ユーザーインタフェースだという。新製品では、現在は主流のUIデザインとなっている「フラットデザイン」や「ClearTypeフォント」を採用。今後はますます、さまざまなOSやデバイスでSolidWorksが使用されていくことを想定し改良したという。またユーザーの色覚の多様性を考え、アイコンカラーの見直しをした。合致設定のアイコンの面選択色は黄緑から水色に変更した。
使い勝手関連では、以下のように改良した。
- フィーチャーツリー内の「履歴フォルダ」内に直近の作業履歴をまとめて表示する機能
- 「グラフィック表示」による断面表示の高速化
- 任意の部品のみ断面表示する
「グラフィック断面表示」は、従来のようにモデルデータそのものに処理をするのではなく、グラフィック表示上で断面を見せる機能だ。同社がユーザーによる実際のモデルで実施したテストでは、約1万点のアセンブリの断面表示速度が全バージョン比で12分の1程度になった結果があるという。表示が早くなる代わりに、細やかな寸法測定はできない。従来の表示法とグラフィック断面は任意選択が可能だ。
大規模アセンブリの2次元図面についても、表示速度を改善した。こちらも上記同様、ユーザーが実際に作成した約1万点のアセンブリ図面でテストしたところ、SolidWorks2013で全表示に34秒掛かっていたところ、2014では17秒に短縮されたという。
透過表示の機能もスピードアップしたとのことだ。
設定ごとで大きなウィンドウを開いていた「コンフィギュレーション設定」だが、フィーチャーツリーやモデルウィンドウの任意のフィーチャを右クリックすると出るアイコンメニューと併せて、関連するコンフィギュレーション設定のみを表示してくれるようになった。
シミュレーション関連
シミュレーション(解析)関連では、3次元CADで設定したボルトの条件(タイプ、材料、強度、与圧)を構造解析の境界条件に自動変換可能とした。また標準ライブラリを利用してボルト結合を自動的に設定する機能も追加した。
このようなCADとシミュレーションツール間の連携の他、シミュレーションツール同士、あるいはシミュレーションと3次元ビュワー同士など、さまざまなツールとの「連想性」を強化した。
2次元図面関連
日本人ユーザーから特に改善要望が多いという2次元図面関係でも、細やかながら、使っている人にとってはうれしい機能が実装された。
まずは、寸法線の数値をはさんで下側に文字を入れる機能。従来までは注記(文字)入力でいちいち入れていたのが、寸法機能で入れられるようになった。これで、寸法線の位置を動かしても、文字だけが取り残されるなど、面倒なことが起こらない。
次に、フィレットの角の交点を自動的に端点認識して寸法記入できる機能。これまでのバージョンでは、いちいち交点を書いてから、寸法を記入していた。
タブレットデバイス関連
「eDrawings」のAndroid対応については、アメリカのSolidWorks World 2013で「2013年夏中」と予告した通り、2013年8月にリリースした。日本でもGoogle Playから193円で購入できる。
eDrawingsのiOS版については、バージョン3.0(2013年2月リリース)から、AR(拡張現実)機能を追加している。現在の最新バージョンは3.1。3次元CAD上のモデルは、実物の大きさがイメージしづらい。このAR機能を使えば目の前にあるモノの写真に実物大の3次元モデルが合成できるため、寸法の直感的な把握にも役に立つ。
ユーザーの実際の反応は?
β版コンテストは、日本人にとって、アメリカにいる開発スタッフにユーザーの意思を直接伝え、製品に反映してもらえるよい機会となっているようだ。日本でのβ版コンテストのフォローも年々、充実してきているとのこと。今回の日本でのミーティングでは通訳が入ったそうだ。今まではソリッドワークス・ジャパンのスタッフが間に入り、意訳で対応していたという。
以降では、βコンテストの日本からの参加者である3人から、記者が直接聞いたSolidWorks2014の新機能に関するコメントを紹介する。
「気になった機能がたくさんあり過ぎて、細かく覚えていない……」と話すのは、2012年(SolidWorks 2013)のβコンテストでは、NOKの東野正信氏とともに上位3位に名を連ねた産業機械メーカー 津田駒工業の山本誠氏。今回は、残念ながらβテスト期間前半だけの参加となった。
「確かにシステムが安定してきているのは感じられた。それから、『何でできないの?』ということが、特にここ1、2年で多く改善されてきた」(山本氏)。
山本氏が思い出した機能改善の1つは、以下の改善だ。
例えば、以下のような作業をしたとする。
- フィーチャ1を作成する。
- フィーチャ1の形状を参照してフィーチャ2を作成する。
- フィーチャ1を削除する。
このような作業をすると、フィーチャ2も消えてしまっていたそう。それが2014では、エラーを表示した状態で残り、チェックボックスで削除するか選択可能だという。ただし、フィレットなど残せないフィーチャも幾つかあるとのこと。
それから、曲線の長さの設定(スプラインそのものの長さを固定しながら曲率を修正する機能)についてもうれしい機能だと述べた。
SolidWorks 2012のβ版から参加し続けているという、電子部品メーカーアルプス電気の真崎要介氏は、特にβ版製品でのシステムの安定性を挙げた。これまでβ版のテスト時は、「色がうまく付かない」「干渉チェックがうまく機能しない」といった、少々のトラブルがあったそうだが、今回は(自分が見ていた限りでは)そういった問題がなかったという。
気になった新機能として、真崎氏は「ベジェ曲線の対応」を挙げた。これまでのSolidWorksは一定の変化率の曲率(G3)しか扱えず、滑らかな自由曲面が作りづらかったという。最近は、業務で自由曲面を扱う機会が増加していたそう。自由曲面に強いハイエンドシステム CATIAのライセンスを増やすにはコスト的に制限があることからも、ありがたい実装だったようだ。
SolidWorks 2013のβコンテストで3部門の3位以内に入賞した産業機械メーカー アスリートFAの土橋美博氏は、システムの安定性やパフォーマンスについて、以下のように語る。
「従来機能に踏み込んだことによる安定性を強く感じた。これまでの新機能追加という視点から少し変わったかなと思う。計算が速くなることもそうだが、“安定している”ということは何よりもパフォーマンスの向上になる。国内のCADは、軽いこともよく強調されるが、それは良いことだが、『それだけなのかな?』とよく思う」。
また、従来機能の改良が目立ったSolidWorks 2014については、「基本へ戻った感じなのかな?」と言う。
「合致設定の追加や合致条件のボックス表示、輪投げ(笑)での選択などの機能追加があった。スケッチ機能の拡充もした。業務では使用頻度は今は少ないが、スタイルスプラインの追加も面白いと思ったし、それを使う用途に可能性も感じた。シミュレーションの『接触表示』も良かった。これらは、従来機能に対しての拡充だと思うが、かつてのサステナビリティのような新分野の追加とは異なっている」(土橋氏)。
SWCNのコマ大戦の取り組みがSolidWorks Worldに登場
今年も2013年11月12日に毎年恒例のSolidWorksのユーザーイベント「SolidWorks World Japan2013」が開催される。今回は長野県の設計者コミュニティーでSolidWorks公式ユーザー会でもあるSWCNが事例講演に登場する。
SWCNが全国の製造業関係者が集うモノづくり競技イベント「全日本製造業コマ大戦」参戦する際、メンバーの設計技術と加工技術を集結させ製作したギミックコマ「ねこパンチ2号」の設計手法について講演する予定だ。SWCNに属するタカノ 新事業開発部 中原健司氏が、品質工学のスペシャリストの目線からその設計技術を紹介する。
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