EV用急速充電の規格争い、チャデモに負けはない:和田憲一郎の電動化新時代!(7)(1/4 ページ)
2012年の春から秋にかけて、「チャデモvs.コンボ」という電気自動車(EV)用急速充電の規格争いに関する報道が相次いだ。その際の論調は、チャデモ方式が、日本の携帯電話と同様にガラパゴス化するというものが大勢を占めていた。あれから1年以上が経過したが、チャデモとコンボ、両方式の現状はどうなっているのだろうか。
電気自動車(EV)が普及するには、クルマ本体だけでなく、充電インフラの拡充が不可欠である。2010年3月、EV用急速充電技術の標準化と充電インフラの普及を目指して設立されたのが「CHAdeMO(チャデモ)協議会」だ。同協議会が策定したEV用急速充電方式であるチャデモは、当初は日本国内の独自規格だったが、国際電気標準会議(IEC)への規格登録の申請を行うなど国際規格としての展開が進められている。
その後、2012年5月に、欧米から「Combined Charging System(コンボ)」と呼ばれる普通充電と急速充電を一体化した方式が逆提案され、メディアでは「チャデモvs.コンボの覇権争いが勃発」などと報道された(関連記事:CHAdeMO対抗の充電規格を米独8社が発表、1個のコネクタで普通/急速充電が可能に)。
現在はそういった騒ぎが収束していることもあり、EV用急速充電方式を取り巻く最新状況について関係者にヒアリングを行い、チャデモとコンボ、両方式の現状をまとめてみた。また、住宅やショッピングセンターなどで普及が進むEV用普通充電器についても取材したので紹介したい。
チャデモ方式急速充電器の国内設置台数は6000台規模へ
まずは、チャデモ方式の急速充電器の普及に尽力しているチャデモ協議会から、会長補佐の多田栄治氏、ならびに事務局の丸田理氏、青木浩行氏にお話を伺った。
和田憲一郎(以下、和田)氏 日本国内におけるチャデモ方式急速充電器の普及状況は。
多田氏 各都道府県は、経済産業省の「次世代充電インフラ整備促進事業」に基づいて、EV用急速充電器の導入に向けた詳細な計画を立案している。まだ全てが出そろったわけではないが、これらを積み上げていくと2014年度末までに累計で約4000台が設置されることになる。つまり、現在の約1700台を加えると6000台規模となり、充電インフラとしてはとても心強い状態となる。
和田氏 では、海外での普及はどうなっているのか。
多田氏 2013年7月5日時点で、チャデモ方式の急速充電器の設置台数は、全世界で約2700台(日本:1716台、欧州:815台、米国:160台、その他地域:12台)となっている。
欧州では、主にエストニア、ドイツ、英国、オランダ、フランス、ノルウェーなどに数多く設置されている。現在も各国で設置が進んでおり、2013年度末には1000台を超えそうな勢いだ。
米国はまだそれほど設置台数が多くはない。しかし、カナダのバンクーバーから、シアトル、サンフランシスコを通り、ロサンゼルス、サンディエゴまで到達する西海岸のインターステート(州間高速道路)「I-5」では、「West Coast“Green Highway” Initiative」や「Electric Vehicle Corridor Connectivity project」といったEV用急速充電器の普及拡大を目指すプロジェクトが同時進行で進みつつある。西海岸と比べて東海岸での普及は遅れているものの、2013年度末には米国における設置台数も1000台規模に達する見込みだ。
和田氏 先日、自動車メーカー4社(トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、三菱自動車)による充電インフラ拡充の共同発表があった。チャデモ協議会はこういった動きと連携しているのか。
多田氏 特段、協議会として連携してはいないが、自動車メーカーのこういった動きや、先述したような自治体の取り組みにより、充電インフラの拡充に向けた活動が推進されていくものと考えている。
和田氏 チャデモ方式のEV用急速充電器を手掛ける海外企業はどれくらいあるのか。
丸田氏 当初はチャデモ方式の認証に時間を要することもあってか、あまり数が多くなかった。しかし最近では、欧米を中心に認証を得た企業数は23社まで増えており、それぞれがチャデモ方式の急速充電器を発売している。
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