画像処理でできること:製造現場で役立つ「画像処理技術」入門(2)
製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第2回のテーマは「画像処理でできること」です。画像処理の利用が最も盛んな工場での製造工程を例に、「GIGI」というキーワードに沿って解説していきます。
本連載では、製造現場で用いられる画像処理技術にフォーカスし、その基礎・概要から、トレンド、導入事例に至るまでを詳しく紹介していきます。
製造現場における画像処理技術とは何か? 本連載を通じ、その特徴やメリット、導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第2回のテーマは「画像処理でできること」です。
画像処理で何ができるのか「GIGI」
画像処理で何ができるのかを説明する際、「GIGI」というキーワードをよく用います。これは「Guidance(ガイダンス)」「Inspection(インスペクション)」「Gauge(ゲージ)」「Indentify(アイデンティファイ)」の頭文字を並べたものです。
今回は、画像処理の利用が最も盛んな工場での製造工程を例に、画像処理で何ができるのかを、これらキーワード(GIGI)に沿って説明していきます。
G:Guidance(ガイダンス)
最初の「G」は“Guidance”の頭文字で、何かを「ガイドする」という意味を持ちます。例えば、画像処理がロボットの目として機能し、ロボットハンドの動作をガイドするということです。ロボットがつかもうとする部品の位置を画像処理で計測し、その情報をロボットに送ります。ロボットはその位置情報を基に、ロボットハンドを動かして、対象物の部品を把持します(図1)。
画像処理がないと、毎回誰か(人間あるいはフィーダと呼ばれる別の装置)が、その部品をきちんと所定の位置に置く(セットする)ことになります。これでは手間もコストも掛かります。
画像処理を導入すれば、部品がどの位置にあってもロボットがつかめるので、製造ラインを簡素化してコストを下げることができます。人間のように休憩する必要もありませんし、フィーダのように複雑な立ち上げやメンテナンスも必要ありません。このことからも、生産ラインの自動化には、画像処理が不可欠であることがよく分かると思います。
I:Inspection(インスペクション)
次の「I」は“Inspection”の頭文字で、日本語でいう「検査」です。生産ラインで検査を行って不良品を排除することは、顧客満足度や企業価値の向上につながる極めて重要な活動です。また、不良品を早期に発見し、製造工程の問題を修正することは、生産効率の向上にも寄与します。
画像処理は、部品や商品を1つ1つ撮影して、キズや汚れの検査、欠陥・欠損をチェックします。万一、製品に本来取り付けられるべき部品が欠損していると、その製品が機能しませんので、これらを検査することは非常に重要です。また、パッケージの印刷や製品の外観にキズや汚れのあるものが店頭に並ぶと、正常に機能したとしても、顧客に「たいしたことのない製品である」という印象を与え、売上低下を招く恐れもありますので、画像処理によるチェックは欠かせません。
画像処理は、最初に所定の設定さえしておけば、24時間、判断基準にムラなく検査を実行します。つまり、工場の所在が、日本であっても東南アジアであっても、同じ基準で検査を行うことができますので、「日本品質」の製品を日本以外でも製造できるようになるのです。
G:Gauge(ゲージ)
もう1つの「G」は“Gauge”、すなわち「寸法」の計測です。製造工程を管理する上で、生産品の寸法をチェックすることは不良品を出さないことに役立つのはもちろんのこと、製造工程の状況を把握する上でも重要です。
例えば、生産品のある寸法が、ある時点から少しずつ変化してきたら、生産ラインに問題が発生する前兆です。もしかすると、金型が摩耗してきているのかもしれません。金型がダメになる前に交換できれば、ムダな不良品を製造しなくて済みます。また、画像処理による寸法計測は、対象物に直接ノギスなどを当てる必要がなく、非接触に行えますので、壊れやすいデリケートなワーク(搬送・組み立ての対象物)を扱うときにも便利ですし、半導体など顕微鏡を通して見るような微小なワークでも計測できます。
I:Indentify(アイデンティファイ)
最後の「I」は“Indentify”、日本語の「認識」ですが、ひらたく言うとバーコード/2次元コード/文字の読み取りのことを指します。これらを読み取ることによって、どの製品が、いつ・どこの機械で加工されたかが把握でき、生産ラインを管理することが可能です。これはつまり、不良品が発生した際、問題のある機械や工程を素早く見つけるのに役立ちます。さらに、製品が工場を出た後の流れ(流通経路)を知るためにも使われ、部品調達のグローバル化が進む中で重要になってきています。また、ニセモノの混入防止としての利用にも注目されています。
金属部品などでは、表面に直接コードが刻印される場合がありますが、一般的にあまりきれいに見えるものではありません(図2)。油の汚れが付着することもあります。また、実際の製造現場では、照明の変化や部品の状態の変化なども起こり得ます。そのため、このような過酷な条件下でも、きちんと読み取れる性能が画像処理に求められます。
今回は、画像処理でできることについて解説しました。次回は「画像処理の流れ」をテーマに、画像処理がどのような手順で行われているのかを紹介します。ご期待ください! (次回に続く)
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