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3Dプリンタの出力サービス、あなたは使ったことある?3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(25)(2/2 ページ)

最近、新たな3Dプリンタの出力サービスが続々と登場している。3Dプリンタブームである今日のユーザーは一体、個人と法人、どちらが多いのか。また、これからはどうなるのか。

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日本の出力サービスは、何で勝負すべきか

 将来的にB2C(個人向け)的な市場が出現するのだとしても、当面はB2B(法人向け)の試作まわりのボリュームに結果的に頼ることになります。現時点ではひとまず、B2Bのニーズを満たすことで、出力サービス事業を伸ばすのが一番でしょう。

 もちろん現時点でも、グローバルで見れば、個人のユーザー層にフォーカスを絞ったビジネスでも成功するかもしれません。ただ残念なことに、日本においては、材料のコストが、欧米と比較すると高くなります。日本のサービスでは、海外の造形材料を輸入しているためです。私も実際、国内外の出力サービスの見積もりの比較をしたことがありますが、欧米のサービスの方が安価に抑えられることは否めない状況です。個人をターゲットとする上で大事な、コストパフォーマンス面で、日本のサービスがポジションを得ることは難しいのかもしれません。

 もっとも、その方法が皆無というわけでもないでしょう。小規模な事業体では難しいでしょうが、ある程度の規模がある企業なら一時的に、その事業が赤字であっても、他の事業収益でカバーすることが可能でしょうし、ビジネスとしてもよくあることです。もっと戦略的に考えれば、相乗効果を考えられる別事業との連携で、材料コストは下げられなくても、出力価格を戦略的に設定することも考えられます。

 もう1つの考え方としては、「出力価格を下げる」以外で勝負をしていくことが挙げられます。例えば、3Dプリンタの利点を活用し、ユーザー側のニーズを丁寧にくみ取っていくことかもしれません。

 まず3Dプリンタが他の方法に対して秀でているのは、とにかく「他の方法よりも手軽で早い」ということではないでしょうか。そうだとすれば、ユーザーが出力サービスに期待するのはスピードです。私自身、3D-GANに置いてある「uPrint」や「Replicator2」で「すぐ出力すること」に慣れてしまっていることから、他の手法でやるよりも「とにかく納品が早い」ということに期待してしまいます。従って、「とにかく早く」というニーズを満たすことは、業務用途の場合には必須の条件といえるでしょう。

 ところが、3D出力サービスに依頼すると、例えば「納品は、発注して2週間後」というケースもあって、結局「町工場の切削加工の方が早い」ということがあり得ます。限られた設備で、ほかの受注案件も平行して対応するためです。この場合は、3Dプリンタの「とにかく早い」というメリットが見えなくなってしまいますね。

 さて、この「とにかく早く」ということと逆説的なことかもしれませんが、2次加工や仕上げに関するサービスも、今後は求められるサービスかもしれません。

 一般的に「出力サービス」と「試作」は同義ではありません。出力サービスは、あくまでも「受け取ったデータをユーザーになり代わって出力(造形)するところ」までです。よくいわれることですが、3Dプリンタの出力物の仕上がりは、切削加工に劣ります。

 個人のユーザーの場合、「出力物を更にきれいに仕上げたい」という場合、必ずしも自分でできるとは限りません。また法人であっても、何らかの仕上げをしてほしいという需要はあります。私自身、3Dプリンタ絡みのサービスでも、2次加工絡みのお問い合わせをいただくことがあります。単なる出力だけではない付加価値をスピードと両立させることができれば、そこが伸びる余地になるのかもしれません。

 それから、法人需要という面では、「開発中のデータを海外のサービスに送る」ということは、つい先日も、お話しをしたあるお客さまが、「価格の問題ではなく、データのセキュリティ上ありえません」と。私自身、開発に関わるお手伝いをする場合には、NDAや契約書等を結びますから、やっぱり安心できるところに依頼することになるでしょう。

徐々に個人ユーザーは増えそう

 現在は法人需要が多い3Dプリンタ出力サービスですが、状況が徐々には変わってくるかもしれません。実際、最近では「ワンダーフェスティバル(ワンフェス)が迫ってくると、出力サービスが大忙し」という話も聞いています。私は今回残念ながら行けなかったのですが、2013年7月28日に開催されたワンフェスは、会場に行った人たちの話では、従来以上に3Dモデラーや3Dプリンタが関わった製作物が増えていたということです。また、これらを活用したことで、今までとは少し違う属性の人たちも出展を始めているようです。

 ちょっと脱線すると、これらかのモノづくりのヒントはワンフェスにもたくさんあるような気がします。次回は2014年2月に開催される冬のワンフェスですが、さらにどのように進化を遂げているか楽しみです。3D-GANも出展を予定しています。

実際に試してみよう

 このコラムをお読みの皆さんは、既に何らかの3次元データをお持ちではないでしょうか? 3次元データを作るスキルとソフトもお持ちだと思います。ぜひ、皆さんもお持ちのデータを出力サービスで利用してみてはいかがでしょうか。いっぱい使って需要を増やし、また使ってみた感想をサービス側にフィードバックすることで、出力サービスがより便利に発展していけば、ユーザーにとってもハッピーなことかもしれませんよ。


筆者より:3D-GANの夏休みイベント

夏休みに3Dプリンターでつくろう! 親子でパソコン工作教室!!

3D-GANが親子向けの3Dプリンタ教室を開催します。

会場は「ネコワーキング」(東京都千代田区)です。

開催:2013年8月17〜18日

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Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。マルチ・ディメンション合同会社社長。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。



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