大衆車にもミリ波レーダー衝突防止を――フリースケールがADAS新製品:集積度アップで低コストに
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンがADAS(先進運転支援システム)対応のレーダーアプリケーション向け新製品を発表。高コストだった77GHz帯ミリ波レーダーのADASソリューションを、集積度を高めることで低コスト化。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2013年6月27日、ADAS(先進運転支援システム)に対応したレーダーアプリケーション向けの新製品として車載マイコン「Qorivva(コリーヴァ)MPC577xK」と77GHz帯ミリ波レーダー送受信チップセット「MRD2001」を発表した。ミリ波レーダーADASソリューション向けの普及価格帯製品を投入することで、大衆車へのADAS採用促進を狙う。既にサンプル出荷を開始している。
集積度アップでミリ波レーダーを低コストに
衝突などの事故を未然に防ぐための予防安全技術への注目が高まっている。高級車などでは既に77GHz帯のミリ波レーダーを使ったACC(車間距離制御システム)やプリクラッシュセーフティシステム(プリクラッシュ)といったADASが標準搭載されつつあるが、システムが高コストであることから大衆車向けにはなかなか普及が進まない状況だ。
ミリ波レーダーのコストで大きな割合を占めると言われているのが送受信回路。77GHz帯のミリ波レーダーでは、これまでGaAs(ガリウムヒ素)ベースの個別部品を用いて送受信回路を構成していた。今回発表されたMRD2001では、より低コストで済むSiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスを用いて集積化。コストダウンに貢献している。
2.5Wという低消費電力を実現した他、対象物の正確な認識を可能にするVCO位相ノイズ性能を装備。マルチチャネルによる高速変調をサポートし、優れた分解能と検出精度を実現するという。チップセットのパッケージ化により、ベアダイ用のチップ/ワイヤ組み立てのための技術が不要になるため、エンドユーザーによるレーダーモジュール組み立てが簡素化。また、最大4個のTxチャネル/12個のRxチャネルまで拡張可能で、ローエンドとハイエンドの両方のミリ波レーダーシステムに対応するスケーラブルなソリューションを実現可能とした。これにより車種ごとにさまざまなソリューションの購入や再構築を行う必要がなくなり、時間と部品コストを大きく節約できるという。
一方、レーダーアプリケーション向けのデジタル/アナログ回路を統合したMPC577xKは、最大4つの主要な追加PCBコンポーネントが不要なため、システムレベルでのコストやフットプリントを抑え、ソフトウェアの複雑さを緩和した。
負荷の高い演算処理タスクに対して優れた性能を発揮する統合デジタルアクセラレータを搭載し、信号処理ツールボックスには短距離/中距離/長距離レーダー向けアプリケーションのサンプル信号処理に必要とされるハードウェアモジュールが全て含まれている。
「フリースケールはアナログとセンサーの技術を持ち、それらを組み合わせたソリューションを提案できる数少ない半導体ベンダー。今回の新製品はその優位性を生かしたもの。これまでミリ波レーダーは高級車に装備されるものだったが、安全基準の高まりによって今後はADAS市場が大衆車まで拡大していく。集積度を高めた今回の新製品で、普及の課題だったコスト面をクリアにした」(同社アナログ&センサ製品本部 本部長の遠藤千里氏)。
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