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リアルタイム解析から8倍速CANまで、自動車の最新技術を具現化する開発ツール人とくるまのテクノロジー展2013

自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2013」(2013年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、自動車開発で重要な役割を果たす開発ツールの最新製品も披露された。その展示内容を幾つか紹介しよう。

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自動車の最新技術を具現化する開発ツール

 自動車にはさまざまな新技術が搭載されている。車両重量の軽減が可能な素材、空気抵抗を減らせるボディ形状、事故を回避できる安全システム、燃費向上が可能なハイブリッドシステム、燃料電池などなど……枚挙にいとまがない。これらの新技術を自動車で活用する上で重要な役割を果たしているのが開発ツールである。本稿では、自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2013」(2013年5月22〜24日、パシフィコ横浜)に出展していた開発ツールベンダーの展示内容を紹介する。

200自由度の3次元車両モデルでリアルタイムHILS

 シムパックジャパンは、開発したECU(電子制御ユニット)の動作をシミュレーションするHILS(Hardware in the Loop Simulation)に利用できる「SIMPACK RT」を披露した。SIMPACK RTの最大の特徴は、機構解析ツール「SIMPACK」の詳細な3次元車両モデルをそのままHILSと連携させてリアルタイムでのシミュレーションを行えることだ。

 詳細な3次元車両モデル、すなわち自由度の高いモデルを使ってシミュレーションを行うと、計算に時間がかかってしまうためにリアルタイム性が失われてしまう。実際にリアルタイムでHILSを実行する場合には、自由度を10〜20まで低減した3次元車両モデルを使うのが一般的だった。SIMPACK RTは、マルチコアプロセッサ対応の専用ソルバーを新たに開発し、計算時間を短縮。自由度が200以上もある、SIMPACKの詳細な3次元車両モデルを使ってリアルタイムのHILSを行えるようになったという。

シムパックジャパンの「SIMPACK RT」のデモ
シムパックジャパンの「SIMPACK RT」のデモ。高自由度の3次元車両モデルを使ったドライビングシミュレータを実現できる(クリックで拡大)

車両構造解析に特化したポストプロセッサ

 日本CDHは、車両構造解析のポストプロセッサ「Animator 4」を展示した。車両全体の構造解析を行う際、メッシュ数は約150万にも達する。構造解析の出力結果も数十Gバイトの容量に達するという。通常のポストプロセッサでこのデータを読み込んで、構造解析の出力結果をアニメーションとして表示しようとしても数分〜数十分かかってしまう。Animator 4は、車両構造解析のポストプロセッシングに特化したことにより、構造解析の出力結果を読み込んで表示するのに数秒程度しか要しない。「ABAQUAS」や「ANSYS」、「NASTRAN」など、車両構造解析に用いられている主要なCAEツールとのインタフェースを有している。国内の全自動車メーカーをはじめ、車体メーカー、大手ティア1サプライヤなど41社に採用されているという。

日本CDHの「Animator 4」のデモ
日本CDHの「Animator 4」のデモ(クリックで拡大)

要件定義書を自動生成

 東芝ソリューションは、技術文書作成・検証支援ツール「SpecPrince for Embedded」を公開した。SpecPrince for Embeddedは、自動車向け機能安全規格のISO 26262に対応した開発プロセス構築で注目されている、要件管理やトレーサビリティの確保を支援するツールである。

 一般的な要件管理では、開発する車載システムの動作条件や動作内容などをひも付けた要件定義書(「Word」などで作成する文書)や要件定義表(「Excel」など作成する表データ)を、IBMの「Doors」などの要件管理ツールに入力することになる。しかし、要件定義書については、作成する部署や技術者ごとに書式が異なったりするため、サプライヤなどに情報がうまく伝わらないなどの問題があった。

 SpecPrince for Embeddedでは、東芝ソリューションが提供するテンプレートを基に作成した要件定義表から、要件定義書を自動で生成する機能を有している。これにより、部署や技術者個人に依存しない形で、一定のルールの基で要件定義書を作成できるようになる。要件定義書の作成に費やしていた工数の削減も可能だ。加えて、SpecPrince for Embedded向けに作成した要件定義表や、SpecPrince for Embeddedから出力した要件定義書を、Doorsにインポート/エクスポートして、トレーサビリティを確保する機能も備えている。

「SpecPrince for Embedded」の利用イメージ
「SpecPrince for Embedded」の利用イメージ(クリックで拡大)

車載情報機器向けセキュリティソリューション

 イータスは、通信機能を備える車載情報機器向けのセキュリティソリューション「Escrypt」を提案した。

 一般的なインターネットでは、通信のセキュリティを確保するためにPKI(Public Key Infrastructure:公開鍵基盤)が利用されている。Escryptでは、一般的なインターネットとは異なり、通信速度が低く、データ処理に割くリソースが限られている車載情報機器の通信機能に最適化した暗号鍵「CycurKeys」を提供している。例えば、CycurKeysの暗号化は、256ビットの楕円曲線暗号(ECC)を採用している。これは、一般的なインターネットで利用されているRSA暗号で2000ビットに相当するセキュリティ強度を有している。また、証明書についても、一般的なインターネットのX.509が1Kバイト程度の容量があるのに対して、Escryptは160バイトと少ない。

 欧米では、テレマティクスサービスにEscryptが導入されつつあるが、「日本ではまだこれから。いきないソリューション提案を行うよりも、車載情報機器のセキュリティについて、その重要性を啓蒙する活動から始めている」(イータス)という。

「Escrypt」の暗号鍵「CycurKeys」を用いた車載情報機器の通信のイメージ
「Escrypt」の暗号鍵「CycurKeys」を用いた車載情報機器の通信のイメージ(クリックで拡大)

通信速度が8倍のCAN、CAN FD

 ベクター・ジャパンは、車載ネットワーク設計ツール「CANoe」の最新バージョンを使って、制御系システムの車載LAN規格としてデファクトスタンダードとなっているCAN(Controller Area Network)を拡張したCAN FD(Flexible Data Rate)に関するデモを行った。

 CAN FDは、CANをベースに、1つのデータフレームに載せられるデータ長を従来の8バイトから64バイトに拡張している。これにより、制御系システムでは通信速度が500Kビット/秒に限られていたCANを、1Mビット/秒以上まで高速化できる可能性がある。

CAN FDに対応した「CANoe」の画面
CAN FDに対応した「CANoe」の画面(クリックで拡大)

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