第24回 EMI対策と対策部品:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/3 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第24回は、EMI対策でも必要になる「フロントローディング」という考え方と、開発プロセスの各段階で行うEMI対策やEMI対策部品について解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2013年3月号の記事を転載しています。
1. フロントローディング
EMCの対策には
- 発生させない(図1)
- 伝搬させない(図2)
- 遮蔽する(図3)
の3つの対策があります。
これはEMSでも同じです。
- 耐性の大きな回路にする
- 受信しない
- 遮蔽する
の3つです。
これらの対策をもっとも効果のある開発タイミングで、実行する必要があります。
製品の開発では、一般に開発の初期では、少人数で、基本的な構想設計を行います。この構想設計の段階では、設計の変更も簡単に行えます。そもそも構想設計自体が、多くの設計を検討して最適設計を検討するものです。
これに対して、設計が後になるに従い、多くの人がかかわり、設計が具体的になります。この段階での変更は多くの具体設計にかかわり、影響も大きくコストも多くかかります。
製造に移ってからの変更は、さらに多くのコストと時間が必要です。製品ができてからの変更は、最悪であれば、リコールとなり、コストや時間だけでなく、会社や製品の評判にまで影響が出、その損失は計り知れないものとなります。また、問題点に対する対応策でも設計段階など、開発の早い段階では多くの対応策が考えられ、その中から最適な手法を選ぶことができます。
それに対し、開発が後の段階に進むに従い、対応の選択肢が限られてきて、コストや手間がかかるわりに効果の薄い対策でも取らざるを得なくなります(図4)。
例えば、現在問題となっているボーイング787のトラブルでも開発の段階で問題点がわかり、対策していれば、設計検討の一段階として、通常に発生することの1つでしょう。しかし、製品化されユーザーが運用をはじめてから初めて気が付いたことにより、社会的な大問題になり、定期便の運休など、ユーザーの損失も計り知れないものとなっています。さらに発見が遅れ、墜落など、人命にかかわる事故が発生してしまったら、取り返しのつかないことになってしまいます。
このため、開発のもっとも初期の段階で、これまで以上に十分な技術検討を行い、後の工程での手直しが発生しないようにしよう、という思想がフロントローディングと呼ばれる開発思想です。
設計にはシステム設計と詳細設計があります。
このあと、製造(試作)があり、製造されたものを、基板や信号単位で検証する個別テストを行います。
基板単位、素子単位で動作を確認して、システム全体の動作テストを行います。
当然、EMC対策でもできるだけ開発の早い段階から対応しておくことが重要です。
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