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これだけは知っておきたい! 「ファイナンスの勘所」目指せT字型人材! 中小企業エンジニアのスキルアップ(6)(3/3 ページ)

中小企業にとって、資金繰りは会社の死活問題! 経営者だけではなく、現場担当者もファイナンスの基本をしっかり理解しておきたい。

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 以上の準備をしっかりとすることで、今回の事例企業は無事に融資の審査がおり、目標通りの店舗をオープンすることができました。また、しっかりとした資料を用意して銀行に行かれた経営者は、銀行の担当者から「ここまで資料を作られる方は、まずおられませんよ……。素晴らしい」という一言をいただいたそうです。

 このようにうまく借入をできた場合の事例を紹介しました。それでは、逆にうまく借入ができないパターンはどのような場合があるのでしょうか。答えは、「これまで紹介したことと逆のことをすること」です。

  • 何のためにお金が必要なのか明確に説明できない
  • 数字の根拠がない
  • 面談で銀行の担当者から質問されたときに明確に回答できない

 このように、当たり前の準備ができず借入が断られて、事業の成長に影響が出ることがないように、借入をする際は万全の準備をして臨むようにしてください。

2.お金の流れを見える化して、資金繰りを把握する方法

 ここからは、少し話を変えて、「お金の流れを見える化する」という話します。なぜ、お金の流れを見える化する必要があるのでしょうか。

 中小企業にとって黒字であることはとても重要ですが、単純に利益が出ていればよいということはありません。「黒字倒産」という言葉があるように、黒字でも倒産する場合があるからです。では、黒字倒産はなぜ発生するのでしょうか。理由はキャッシュ、つまり現金が不足してしまうからです。

 具体的には図6のイメージです(話を簡単にするために単純な例で説明しています)。


図6 黒字倒産はなぜ発生するのか

 この会社は、20XX年6月1日に100円の品物Aを掛け(料金後払い)で仕入れました。そして、20XX年6月15日に120円で品物Aを掛けで販売致しました。この時点で、(粗)利益は20円です。この数字だけを見れば黒字です。ですが、この話には続きがあります。

 品物Aは、20XX年6月15日に売り上げましたが、実際に売り上げた120円のお金(キャッシュ)はまだ手元にありません(20XX年7月30日に入金される予定になっています)。 すると、20XX年7月1日に買掛金100円を支払う日が来てしまいました。この時に100円の現金がなければ……支払う資金がありませんので、この会社は黒字ながら資金ショートを起こしてしまい、場合によっては倒産となってしまいます。

 この例は非常に単純な例ではありますが、実際の中小企業の現場ではこのような事態がよく見受けられます。そのために、経営者は自社の利益を管理するだけでなく現金つまりキャッシュの流れをしっかりと把握しておく必要があります。

 そのために利用するツールが、資金繰り管理表です。資金繰り管理表を作成することで、お金の流れを見える化することができ、先々にお金が足りなくなりそうだなと事前に分かっていれば、必要な資金を借入するなど事前に対策を打てるようになり、先に紹介した「黒字倒産」という事態を回避することができるようになります。

 資金繰り管理表には、特に決まったフォーマットはありません。従って、各企業に応じて必要な項目を作成することになります。そして、ここで注意すべきは、資金繰り管理表は実際に現金が入ってくるタイミングを記述するということです。現金商売をする企業では、売り上げとキャッシュイン(実際に現金が手元に入ってくる状態)が一致しています。しかし、企業の特性(掛け販売を実施しているなど)により、売り上げとキャッシュインがずれる場合があります(支払いも同様です)。資金繰り管理表で扱うべきは、実際の現金の流れになるので、売掛金・買掛金の現金化のタイミングを押さえておく必要があります。これらを踏まえて、資金繰り管理表では、収入面は「現金売上」「売掛金入金」「手形入金」などの項目を書き、支出は「現金仕入」「買掛金支払」「支払手形決算」などの項目を書きます。

 図7は、資金繰り管理表のサンプルです。現金の流れが分かるように項目を取り決めます。


図7 資金繰り管理表のサンプル:この例は、月ごとの資金繰りを管理するために月単位で書いています。把握する単位によって、日単位・週単位の資金繰り管理表を作る場合もあります。

 資金繰り管理表をまだ作られていない企業は、自社の現金の流れを把握するためにも、一度作成することをお勧めします。

 前回、今回と2回にわたり財務会計とファイナンスというお金の面にフォーカスを当てた内容を紹介しました。会社にとってお金は必要不可欠なものです。よく、お金は人間の体内の血液に例えられます。血液がきれいに流れているうちは、人間は健康でいられますが、血管が詰まり血液が流れなくなったり、止められないほどの出血が起こったりすると、すぐに対処しなければ場合によっては死に至ります。それと同じように、お金も常に企業を循環していなければいけません。そして、何かあればすぐに対応しなければ、ある日突然倒産という事態も起きえます。そのようなことが起きないよう、しっかりとした知識を身に付けて、ご自身の会社の経営を自分なりに見る目を養ってください。


 次回は「中小企業施策・政策」テーマにお届けします。お楽しみに!

Profile

平阪 靖規(ひらさか やすのり)

中小企業診断士。大手SI企業にてITコンサルタント・プロジェクトマネージャを経験。その後、独立し中小企業向け経営コンサルタントして活躍。現在は、コンサルティング業務の他、公的機関での創業支援、中小企業診断士の講師業、中小企業のIT化支援に携わっている。全国2万人の中小企業診断士のためのプラットフォームを目指す「中小企業診断士の輪」を運営中。趣味は、登山と新聞の切り抜き。



MPAについて

「MPA」は総勢70人以上の中小企業診断士の集団です。MPAとは、Mission(使命感を持って)・Passion(情熱的に)・Action(行動する)の頭文字を取ったもので、理念をそのまま名称にしています。「中小零細企業を元気にする!」という強い使命感を持ったメンバーが、中小零細企業とその社長、社員のために情熱を持って接し、しっかりコミュニケーションを取りながら実際に行動しています。

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