第23回 EMIの原理と対策:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/3 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第23回は、任天堂の最新ゲーム「Wii U」を例にとりながら、EMIの原理と対策について解説する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2013年2月号の記事を転載しています。
1. 「Nintendo Wii U」
任天堂から最新のゲーム機「NINTENDO Wii U」が発売されました。
任天堂のホームページには、このWii Uの開発話があり、興味深いのですが、その中に特に興味を引かれる写真があります(図1)。
これは、ヒートシンクシールドと呼ばれる部品で、ヒートシンクからの電磁放射を遮蔽して、EMI対策部品です。
分解記事や写真を載せるiFixitの写真では、Wii Uの製品ではこのヒートシンクを含め、基板全体をシールドする機構が用いられています(図2)。
このWii Uだけではなく、現在の電子機器ではEMI対策は機器開発のもっとも大きな問題となっており、対策にかかる時間とコストも非常に大きなものとなっています(図3)。
2. EMCは最大の問題
電磁ノイズ(EMC:Electromagnetic Compatibility)には電磁ノイズを発生するEMI(Electromagnetic Interference)と電磁ノイズを受けて回路が誤動作するEMS(Electromagnetic Susceptibility)の2種類があります(図4)。
病院や電車の優先席付近では、携帯の電源を切るように求められますが、これは実際に、埋め込みのペースメーカーが外部からの大きな電磁ノイズで誤動作するからです。
また、飛行機の離着陸時にも電子機器の電源を切ることが義務づけられています。これは、飛行機の電子機器が発生する電磁ノイズで誤動作して事故が発生しないようにする安全対策です。
このように、電子機器が発生する電磁放射ノイズは他の電子機器に与える影響が大きいので、その放射量に対して強い規制がかけられています。
この規制は、国や地域ごとに独自の規格になっています。
たとえば、国際的な規格としてはCISPR(国際無線障害特別委員会)、地域規格としては、NAFTA(北米自由貿易圏)、EU(欧州連合)、EFTA(欧州自由貿易連合)などがあり、国別の規格ではアメリカのFCC規格や日本のVCCI、イギリスのBS規格を始め、VDE(ドイツ)、GB(中国)など各国でおのおのの規格が定められています。
電子機器の高速化に従い、どの規格でも、高い周波数まで厳しく規制されるようになってきています。
携帯やスマートフォンは電磁波の発生器であると同時に受信機でもあります。電磁ノイズ放射を抑えようとすると、通信の感度が下がり、感度を上げると、放射が増えてしまいます。
このような機器では、各国で通信用に使われている周波数の電磁波だけを透過して他の周波数の電磁波を遮蔽するという難しい設計が要求されます。
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