PS2にも使われていた! アルマイトと接地(GND)を理解しよう:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(11)(1/4 ページ)
プロの板金設計には、接地(GND)の知識は必須! 併せて、アルマイト処理に関しても解説する。
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
沢田恵梨香(さわだ えりか)
ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回は、エリカちゃんが初登場しました。なかなかの色白美人で、筆者も少々ドギマギしてしまいました! さらに、ドキッ! とした発言がエリカちゃんからありました。
甘えないでください! 私たち技術系派遣社員は、国木田さんのようなヌルイ正社員よりずっと大変なんです!
エリカさまぁ……。
技術系派遣社員の世界は、大変厳しいのです。隣国巨大企業の設計者は、「年俸制の業務指名制」であることは、甚さんシリーズで何度かお伝えしてきました。日本の派遣社員は、年俸制でこそありませんが、業務指名制です。
当事務所のクライアント企業によると、以下が指名の条件とのことです。
- 3次元CADが3機種ぐらい操作できる
- 簡単なCAEを実行できる。簡単なレベルで可
- 設計書が書ける
- 設計審査を受検できる
- プレゼンテーションができる
以上の5項目です。少なくとも、3次元CADが操作できなければ、話にならない世界なのです。もちろんエリカちゃんは、全ての条件を満たしています。
この話を聞いて、「へぇ〜、そうだったの!」って思ったんですよね〜。
オメェ、随分他人ごとじゃねぇかい……。
このような隣国企業や他業種の情報を伝えると「へぇ〜、そうだったの!」とか「それは大変ですね!」と言う学生や若手技術者がいます。まるで他人ごとです。商品設計、部品設計、生産ライン設計、組立治工具設計、検査治工具設計などに携わる「設計者」、つまり「同業者」の情報なのに、他人ごとなのです。
「あのラーメン屋、毎日が行列だって!」「へぇ〜、そうだったの!」「それは大変ですね!」と同業者同士で話すラーメン屋は存在するでしょうか?
おぉ、そうよ! 「円安、株高」と言っても、そりゃオメェ、経済の話であってよぉ、技術の話じゃねぇぞ。あん? 日本の技術とアベノミクスは、あんマシ……関係ねぇぞ! そろそろ、気合いを入れろ!
そうそう、「アベノミクス」とは、安部首相とエコノミクス(economics、経済、経済学)を合わせた造語なんですよね。
それでは、安部首相と技術で「アベテックス」はどうですか? きっと、隣国に追い付かれ追い抜かれた日本の技術も、リベンジできますよ。でへぇ〜〜。
……。
オメェ、本当に富士山麓大学の主席の院卒かぁ?
……。
甚さん、前回も言ってた「アルマイト処理」や「接地技術」に関して教えてください! 板金設計には必須なんですよね。
おぉ、そうだったなぁ。そんじゃ、始めるかぁ! まずはアルマイトからいくぜぃ!
アルミはさびます。だからアルマイト
そもそも前回、アルマイト処理という単語が出てきたのは、100円ショップの灰皿の説明のときでした。その材料がアルミ製だと、エリカちゃんが答えましたね。
ところで筆者の青春時代、新車を辛口で評論する「間違いだらけのクルマ選び」という本が大人気でした。自分が「欲しい!」と憧れていた車が、実は設計的には欠陥品だったり、不人気の車が、実は非常にコストパフォーマンスが高かったりして……、「偏見のある評価」と知りながらも、その内容に非常に感銘を受けていました。
そういうわけで「甚さんの『間違いだらけの機械設計知識』」、アルミ編といきましょう。
アルミってさびない金属ですよね? 窓のアルミサッシは、いつもピカピカですよ。
アルミ
さびないと思っている人がびっくり。本当は、非常にさびやすい(甚大寺甚恒)
- アルミは非常にさびやすい。一晩でも表面がさびるかも。1週間なら確実にさびだらけ。ひどいときは、白い粉が付着したようになる。アルミ製の一円玉はすぐさびるし、実は既にさびている。
- さび対策するための表面処理の1つがアルマイト処理。通称、アルマイト。よくアルミサッシなどに施される。非常にさびにくく、美しい。
- アルマイトは電気的絶縁状態。従って、導通不可。
- アルミ(一円玉)と銅(十円玉)を重ねると、アルミが猛烈にさびやすくなる。この現象を「ボルタの電池」、技術者なら「電食」と呼ぶ。
第4回の「全てのステンレスは、さびる!」の記事、特に「電食」も必ず復習してください。「金属の電気化学的電位表」を知らない技術者は、かなりの“ド素人”であり、隣国では業務指名を受けられません!
……アルマイト処理されていたのですね。
アルマイトってお高くないんですか?
いんや〜、そうでもねぇんだなぁ、これがぁ! サッシや門扉、100円ショップの灰皿にも採用されているぐらいだからなぁ。そんじゃよぉ、この表1を見ろ!
「装飾」……この用途(=使用目的の明確化)を考えれば、アルマイトは確かに安いと思います。
自慢じゃねぇけどよぉ〜、コスト情報まで教えるのは、世の中でこのオレサマしかいねぇぞ〜! んだから、シっかと勉強しろよ。
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