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表計算ソフト頼りから製造業が抜け出すには――先進事例を学ぶ「ビジネスS&OP」とは何か(3)(3/4 ページ)

「利益ベースのサプライチェーン運営」と「収益最適となる需給バランス計画」をキーとするビジネスS&OP。実際に適用すると何が変わるのか。今回は食品系の製造業を中心にグローバル事例を4つ紹介する。

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事例3:システムを刷新し、プランニングの精度と効率を高める

〜 ベルギーの生鮮食品メーカーのケース 〜

事業、サプライチェーンの特徴、ビジネス課題

 次は、賞味期限が非常に短い生鮮食料品を扱っている食品会社の事例です。

 T社は、パスタなどを使った調理済み食品やデリカテッセン向けの加工肉製品の開発・生産・流通販売を行っている、ベルギーの大手食品製造グループ企業です。

 国内生産拠点とグループ内の加工肉部門会社の工場、調理済み食品部門の工場を合わせ、合計10の工場を持ち、西欧・東欧諸国の卸売業者やディスカウント店、小売店に販売しています。自社ブランド製品を展開する他、OEM製品も製造・販売しています。

 T社は生鮮食料品を取り扱っているため、賞味期限管理を重要視しています。最大在庫期間は長いもので5〜6日。販促プロモーションやスーパーマーケットの特別価格プロモーションが、需要に大きく影響します。こうしたビジネス環境で、商品の欠品や余剰を最小限に抑えることが、T社のビジネス課題です。

業務改善と情報テクノロジーの活用

 T社は、過去10年にわたってプランニングシステムを利用してきました。従来のシステムは、大部分を計画担当者が持つ知識に頼ったものでした。このため、プランニング担当者の誰か1人が休暇の場合や業務を中断した場合、即座に問題が発生します。恒常的に精度の高い計画を立てるためには、必要な機能を十分に網羅した、新しいプランニングシステムが不可欠だったのです。

 次期プランニングツールの採用に当たっては、生産・流通のさまざまな制約の他、賞味期限や品質管理に関わる条件を考慮し、多種多様な生産プロセスに対応できる、システムの柔軟性を要求しました。そして業務分析に基づきプランニングプロセスの自動化を検討した上で、システムに要求される機能要件を明確化し、実装していきました。

 新しいプランニングシステムは、T社が持つ複雑な条件をできるだけ組み入れ、合理的な範囲でプロセスを自動化するようデザインされました。採用したツールが柔軟性に富んでいたため、そのようなカスタムデザインが可能だったのです。その結果、人手によるデータ入力の負荷が大幅に減り、以前よりも短時間で効率的にプランニングを行えるようになりました。

 また新しいプランニングシステムはサプライチェーンの詳細な洞察に基づいて提供されるので、プランニングの精度が向上し、同時に例外事項への対応力が増しました。

成果

  • 自社のサプライチェーン機能向けにデザインされた自動化システムを持つことができ、その結果、よりスピーディで精度の良いプランニングができるようになりました。
  • 個々の計画担当者の知識、経験に依存することがなくなりました。
  • 重要な情報の可視性とサプライチェーンへの洞察が高まり、計画担当者の作業が簡素化し、論理的になり、欠品や過剰在庫の最小化に貢献しています。
  • 計画担当者がデータ入力に費やす時間が減り、製品品質や戦略計画など、より付加価値の高い業務に時間を振り向けることができるようになりました。

考察〜T社の成功ポイント

 T社の成功の鍵は2つありました。まず、従来のプランニングプロセスのどこに問題があり、何をシステムで自動化すべきで、どういった難しさがあるかについて、明確化した上でシステム刷新に臨んだこと。次に採用したツールがT社の要件に対応できるだけの十分な柔軟性と開発生産性を備えていたことです。

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