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これだけは知っておきたい! 「マーケティングって何?」(後編)目指せT字型人材! 中小企業エンジニアのスキルアップ(3)(2/3 ページ)

マーケティングの基礎・後編では、「マーケティングミックス」について解説する。標的とした市場セグメントに、どのようにアプローチすればいいのだろうか。

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製品と顧客が出会う場をいかに設定するのか

 せっかく開発した製品も、顧客が手に入れることができなければ“無駄な努力”となってしまいます。製品と顧客が出会う場を設定することが「流通」です。マーケティング用語では、この製品と顧客が出合うまでの経路を「チャネル」と呼んでいます。

 企業が製品を販売する方法は、顧客に対して直接販売する方法と仲介業者に委託する方法の2つに大別できます。前者は、訪問販売、インターネット販売、カタログ通販などで、後者はメーカーと小売店の関係などです。近年はインターネットの普及により生産者が消費者へ直接販売する形態が増えつつありますが、本稿では「仲介業者に委託する」流通に絞って見ていきましょう。

 まず、なぜ企業はわざわざ販売業務の一部を外部の仲介業者に委託するのでしょうか? 委託するということは自分たちでコントロールできないリスクが高まりますので、一見不利益のようにも思えます。しかし、仲介業者に委託するメリットがしっかりと存在するのです。

 企業が生産する製品の組み合わせと消費者が欲しがる製品の組み合わせには、通常、食い違いがあります。例えば、お昼ご飯を買いに出掛けるとき、お弁当と飲み物をセットで買うことが多いと思います。しかし、お弁当を生産している企業と飲み物を生産している企業は多くの場合別々です。もし、それぞれの企業がお弁当のみを販売する店と飲み物のみを販売する店を独自に開業していたとすると、消費者は、それぞれの店で買い物をしなければならずとても面倒です。私たちの日常生活では、コンビニエンスストアやスーパーマーケットといった仲介業者(小売店)が多数存在するため、このような不便さを感じることなく欲しいものを1カ所で購入できるのです。

 このことは、生産者にとっても流通にかかわる作業量を減らせるというメリットがあります。例えば、図1のように3つの企業が3つの顧客に対して製品を販売する場合は、仲介業者がいないと企業ごとに3回の接触作業が必要で、全体でみると接触作業は9回となります。


図1 仲介業者がいないケース:フィリップ・コトラー著「コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版」を基に筆者が作成

 一方で仲介業者がいる場合は、各企業の接触作業は1回、全体でも6回となり、顧客と接触するための作業量を減らすことができるのです(図2)。


図2 仲介業者がいるケース:フィリップ・コトラー著「コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版」を基に筆者が作成

 それでは、次に仲介業者の数をどのように決めれば良いか見ていきましょう。仲介業者の数の決め方には主に3つのやり方があります。

  1. 排他的チャネル政策:仲介業者の数を厳しく限定するやり方です。製品情報やブランドイメージを自社でコントロールすることが可能なため固定客をつくりやすいというメリットがあります。そのため、高級品ブランド品、自動車など消費者が特定の製品を指定して購入する「専門品」と呼ばれる製品に採用されるやり方です。

  2. 開放的チャネル政策:より多くの仲介業者を確保するやり方です。仲介業者の数を最大化することで、消費者がいつでもどこでも購買できる環境を作ることを目的としています。仲介業者が増えることで多くの消費者が目にする機会が増えるため、食料品、日用雑貨など購買頻度が高く、時間をかけず購入する「最寄品(もよりひん)」と呼ばれる製品に採用されるやり方です。

  3. 選択的チャネル政策:仲介業者の中から数社を選んで用いるというやり方です。開放的チャネル政策と比べると、仲介業者のコントロールが可能なため、家電製品、洋服、化粧品など最寄品よりも品質や価格について比較検討して購入する「買回品(かいまわりひん)」とよばれる製品に採用されるやり方です。

 このように流通では、専門品、最寄品、買回品といった自社の製品特徴に応じてチャネル政策を選択することが必要なのです。

適切なプロモーション・ミックスが購買を促進する

 顧客の欲求を満たして製品が魅力的な価格で入手できるだけでは、まだ十分とはいえません。それらの存在を標的市場セグメントに知らせる必要があります。その役割を担うのが「プロモーション」です。プロモーションには主に4つの方法があります。

  1. 広告:日常生活で良く目にするテレビCM、新聞広告、雑誌広告、屋外看板などのことです。企業は自社のメッセージを広告で何度も繰り返すことで、認知度の向上や長期的な製品イメージを作ることができます。

  2. 販売促進:製品のサンプリング、値引き、ポイントカードなどのことです。販売促進は、購買者に何らかのメリットを提供して「今買った方が良いですよ」と購買を促すために行われるもので、売り上げが落ち込んでいる時や短期的に売り上げをアップさせたいときなどに使うことができます。

  3. パブリシティ:パブリシティとは、テレビ、新聞、雑誌などのメディアに対して広告ではなくニュースとして自社の製品を取り上げてもらうことです。マスメディアという第三者からの情報発信となるため広告よりも高い信頼性が獲得できるという特徴があります。

  4. 人的販売:実演販売、セールスマンによる訪問営業など見込み客と対面して情報提供することです。購買者が購入を迷っているときや最終的に購買への後押しする場合に効果的な手法です。

 プロモーションでは、これら4つの手法の相乗効果を実現するために各手法の特長が生かされるように組み合わせていくことが求められ、このことを「プロモーション・ミックス」と呼んでいます。

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