クラウド活用から始まる「自動車とIT」の蜜月:オートモーティブワールド2013 リポート(1/3 ページ)
2013年1月16〜18日に、東京ビッグサイトで開催された自動車関連技術の展示会「オートモーティブワールド 2013」では、車載情報機器とクラウドサービスなどを組み合わせた「自動車とIT」の方向性を示す展示が披露された。注目展示をピックアップして紹介しよう。
東京ビッグサイトにおいて2013年1月16〜18日の3日間「オートモーティブワールド 2013」が開催された。「第5回 国際カーエレクトロニクス技術展」「第4回 EV・HEV駆動システム技術展」「第3回 クルマの軽量化技術展」などからなる自動車技術展示会で、出展社数は前年比110社増の460社、来場者数は同20%増の1万9820人と規模を拡大させている。
今回からは、自動車に無線通信機能が搭載されるようになって、年々関係性が増している「自動車とIT」に焦点を当てた「第1回 クルマのITソリューション展」も加わった。そこで本稿では、自動車におけるITの活用をテーマに、オートモーティブワールド 2013で注目を集めた展示を紹介しよう。
自律走行可能な「クラウド・ロボカー」
展示会場の一角には、「電気自動車特別コーナー」があり、バスから小型車まで十数台の電気自動車(EV)が展示され、多くの来場者が詰めかけていた。最も注目を集めていたのが、マイクロソフトとゼットエムピーが出展した次世代自動車開発用プラットフォーム「クラウド・ロボカー」だ。
ゼットエムピーは、2009年から次世代自動車の研究開発向けに「RoboCarシリーズ」を発売してきた。クラウド・ロボカーは、RoboCarシリーズの最新製品である「RoboCar HV」や「RoboCar PHV」と、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Windows Azure」と組み合わせたものである。
展示に用いたRoboCar PHVは、トヨタ自動車のプラグインハイブリッド車(PHEV)「プリウス PHV」をベースに独自の制御システムを搭載しており、コンピュータによる自律走行やCAN(Controller Area Network)を通じた車載システムのデータ収集が可能である。もちろん、ベース車のプリウス PHVと同様に、エンジンを使わずにモーターだけで走行するEV走行も行える。自動車メーカーや自動車関連技術(車載通信技術、運転支援技術、自律走行技術など)の研究開発を行う研究所向けの実験車両という位置付けの製品だ。
2012年5月に発表したハイブリッド車(HEV)「プリウス」ベースのRoboCar HVは、自律走行が可能ではあるものの公道走行を行えないモデルしか用意していなかった。RoboCar PHVの場合は、RoboCar HVと同様に自律走行が可能だが公道走行はできない「RoboCar PHV」と、自律走行はできないが公道走行を行える「RoboCar PHV Primitive」という2つのモデルを用意した。RoboCar PHVとRoboCar PHV Primitiveを開発したのは、顧客から「より長距離のEV走行に関するデータを収集したい」、「一般道路を走行しながらデータを収集したい」、という顧客からの要望に応えるためだ。
クラウド・ロボカーでは、CANを通じて集めた車載システムの各種情報(車両位置、速度、ステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトポジション、加速度、角速度、方位、バッテリー情報、車内温度、ドアの開閉など多岐にわたる)や、オプションで追加するステレオカメラやレーザーレンジレーダーなどのセンサー情報を、携帯電話通信を介してWindows Azureで構築したクラウドサービスにリアルタイムで送信する。クラウドサービスに送られたデータは、遠隔地の研究開発拠点でもリアルタイムで確認できる。これによって、次世代自動車の開発効率を高めたり、RoboCar PHVを介して蓄積された大量のデータをビッグデータとして活用したりといったことが可能になるとしている。
RoboCar PHVの価格は1400万円、RoboCar PHV Primitiveの価格は600万円から。展示会最終日の3日目に取材したのだが、RoboCar PHVの周辺を多くの来場者が取り囲むなど盛況だった。ゼットエムピーによると、「開催期間中に、何件も購入の問い合わせを受けている」という。
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