25年の歴史を持つトヨタのバイオ・緑化事業、新商品「新特別急酵」を発売:メニコンと共同開発
トヨタ自動車とメニコンは、畜産農家が家畜の排せつ物を堆肥化する際の作業負荷やコストを低減できる堆肥化促進剤「新特別急酵」を開発した。1989年からバイオ・緑化事業の基礎研究を開始したトヨタ自動車の知見と、メニコンの分解酵素・微生物技術が基になっている。
トヨタ自動車とメニコンは2013年1月23日、畜産農家が家畜の排せつ物を堆肥化する際の作業負荷やコストを低減できる堆肥化促進剤「新特別急酵」を開発したと発表した。
両社は2006年7月から、食物繊維分解酵素入り「特別急酵」と、発酵温度を高める高温菌入り「サーモ・マスター」を用いた堆肥化促進システム「resQ45」を販売している。1989年からバイオ・緑化事業の基礎研究を開始したトヨタ自動車の知見と、メニコンの分解酵素・微生物技術を元に開発した。今回の新特別急酵は、特別急酵とサーモ・マスターを一体化した商品となっている。
既存の堆肥化では、家畜の排せつ物に水分調整材(おが屑など)を混ぜて自然発酵させる。しかし、水分調整材に含まれるセルロースなどの分解に長期間の時間を要するため、堆肥の完成するまで90〜180日掛かっていた。
resQ45では、特別急酵とサーモ・マスターによって、難分解性の食物繊維を従来よりも短い期間で分解できる。堆肥完成までの期間は約45日で済む。そして、堆肥化のための発酵環境を1度作った後は、家畜の排せつ物に完成堆肥を一部混ぜる「戻し堆肥」と言う手法により、サーモ・マスターを追加投入する必要がないとしていた。
しかし、「導入実績を重ねる中で、この戻し堆肥を繰り返す方法では、サーモ・マスターの高温菌の減少や活性低下により、堆肥化の促進効果が減退しかねないという課題が判明した。戻し堆肥による作業負荷も問題になっていた」(トヨタ自動車)という。
特別急酵とサーモ・マスターを一体化した新特別急酵を用いれば、戻し堆肥の混合作業が不要になる。確実に堆肥材料に高温菌が入るので、安定した堆肥化も実現できる。さらに、畜産農家の運用コストを従来比で10%低減することも可能だ。1袋(8kg入り)の価格は5,800円。特別急酵から新特別急酵への切り替えを進めながら、完全移行後には年間約2万2000袋の販売を目指す。トヨタ自動車の子会社であるトヨタルーフガーデンが製造・販売元となり、豊田通商を通じて販売展開を進める。
基礎研究開始から25年、事業化から15年
トヨタ自動車は、環境対応を進めるため、エコカーの開発や工場からの環境負荷低減だけでなく、新たな事業分野として環境貢献型事業を展開している。バイオ・緑化事業はその1つで、1989年から基礎研究を始め、1998年に事業化された。
同社のバイオ・緑化事業は、植林事業や花卉(かき)事業、環境緑化事業などの「緑化」が先行している。「バイオ」については、今回の新特別急酵をはじめとする畜産バイオマス活用事業が中核である。
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