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WebブラウザからHTML5プラットフォームへ――「NetFront」が目指す将来像ACCESS NetFront インタビュー(1/2 ページ)

ACCESSは、組み込み機器向けに展開しているWebブラウザ「NetFront」のレンダリングエンジンを独自のものからWebKitベースに切り替え、HTML5プラットフォームとして脱皮を図る戦略を進めている。同社が最も期待している車載情報機器市場への取り組みを中心に、取締役 専務執行役員でCTO(最高技術責任者)を務める石黒邦宏氏に話を聞いた。

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「NetFront Browser NX」による「HelloRacer」の動作デモ

 現在、カーナビゲーションシステムに代表される車載情報機器の多くが、携帯電話やPHSを用いた通信機能に対応するようになっている。通信機能の使われ方は、最新の地図データや地点情報の入手や、渋滞予測サービスの利用などが中心だが、Webブラウザを用いたWebサイトの検索や閲覧もその1つである。

 車載情報機器をはじめとする組み込み機器向けにWebブラウザを提供してきた企業の1つにACCESSがある。同社が独自に開発したレンダリングエンジンを搭載する「NetFront」は、省メモリでの動作と、さまざまなプロセッサへのポータビリティを特徴としており、携帯電話機(フィーチャフォン)やPHS、ゲーム機などに広く採用されてきた。車載情報機器でも、Daimlerや日本の大手カーナビメーカーなどに採用されている。

 独自エンジンを用いるNetFrontに対して、近年になってWebブラウザエンジンのデファクトスタンダードとして台頭しているのがオープンソースの「WebKit」である。WebKitは、Web標準技術であるHTML5との優れた互換性を最大の特徴としており、現在では、PCやスマートフォン、タブレット端末に至るまで、ブラウザのエンジンはほとんどがWebKitベースになっている。

 さらに、Androidや組み込みLinuxを活用しようとしている組み込み機器向けのWebブラウザについても、WebKitベースのブラウザが主流になりつつある。そして、ブラウザ上で動作するコンテンツもWebKitを前提として開発されるようになっているのだ。

WebKitベースに舵を切る

 WebKitが主流となっている現状に対してACCESSも手をこまねいているわけではない。2011年6月には、WebKitベースのブラウザとして最小クラスのメモリ容量を実現した「NetFront Browser NX」を発表した。

ACCESSの石黒邦宏氏
ACCESSの石黒邦宏氏

 同社の取締役 専務執行役員でCTO(最高技術責任者)を務める石黒邦宏氏は、「市場動向を見ながらNetFrontの開発の方向性について再検討した結果、独自エンジンによるポータビリティを重視する戦略から、WebKitを用いてそれぞれのプロセッサプラットフォームに最適化したWebブラウザを提供するという戦略に舵を切ることにした」と語る。

 石黒氏は、新たな戦略を強化すべく、2012年初頭から社内で特別プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトは、車載情報機器やテレビ、セットトップボックスといった機器別市場で大きなシェアを獲得している各プロセッサプラットフォームに対して、NetFront Browser NXを個別に最適化して処理速度を極めるというもの。処理速度のベンチマークにしたのは、WebGLを用いた3Dグラフィックスの処理と、JavaScriptコードの処理である。

 対象のプロセッサプラットフォームは、車載情報機器向けではルネサス エレクトロニクスの「R-Car H1」、セットトップボックス向けではBroadcomやSTMicroelectronicsの製品になる。これらの他、プロトタイピングに用いられることが多い、Texas Instrumentsの「OMAP4」を搭載する「PandaBoard」や、x86系プロセッサもカバーすべきということでIntelの「Atom」も対象にした。

 石黒氏は、「オープンソースのWebKitを、プロセッサプラットフォームの特性に合わせて最適化することで、Webブラウザの性能を最大限まで引き出せるようになる。これは、プロセッサコアの数によって同時に処理できるスレッド数が変わったり、グラフィックスアクセラレータの種類によって3Dグラフィックスの処理に用いるWebGLへの対応にクセがあったりするためだ」と説明する。

 プロジェクトの活動によって、3Dグラフィックスを用いたWebGLベースのユーザーインタフェース(UI)の表示速度を、平均で10倍程度まで高めることができた。「最適化前の動きが『カクカク』だったのが、最適化後は『ヌルヌル』になったと言えば分かりやすいだろう」(石黒氏)。

 例えば、ルネサスのR-Car H1に最適化した結果、HTML5やWebGLによる3Dグラフィックスのデモンストレーションに広く利用されている「HelloRacer」について、PCレベルのダイナミックレンダリングを実現できたという。石黒氏は、「単に3Dグラフィックスを再生しているのではなく、方向ボタンに合わせてHelloRacer内のレースカーが高い応答性で動いている。つまり、このレベルの3Dグラフィックスを用いた動的なUIをカーナビに実装できるということを意味している」と主張する。

ルネサスの「R-Car H1」に最適化した「NetFront Browser NX」による「HelloRacer」の動作デモ(クリックすると再生)

 2012年の活動では、対象としたプロセッサプラットフォームへの最適化に関する一定のメドが付いた。2013年以降は、コア数が4個以上のマルチコアプロセッシングへの最適化に向けた取り組みを進める予定だ。

最新バージョンのHTML5 Test Scoreは468

 ACCESSは、プロセッサプラットフォームへの最適化だけでなく、基礎となるNetFront Browser NXのバージョンアップにも注力している。間もなくリリースされる最新バージョンの「NetFront Browser NX v3.0」は、HTML5への規格準拠の度合いを示すHTML5 Test Scoreで468を記録した。現行バージョンである「NetFront Browser NX v2.0」が300台であったのと比べれば大きく進化したと言えるだろう。ちなみに、GoogleのPC向けブラウザ「Chrome」が441、Android 4.0の標準ブラウザが284である。

「NetFront Browser NX v3.0」のHTML5 Test Score
「NetFront Browser NX v3.0」のHTML5 Test Score(クリックで拡大) 出典:ACCESS
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