「信頼性で日本の産業機器市場に切り込む」、独ホール素子メーカーが表明:ビジネスニュース 企業動向
Micronas(ミクロナス)は、これまでに25億個のホール素子を出荷した実績を持つ、ドイツの半導体メーカーである。従来は車載分野が主なターゲット市場だったが、「高い信頼性を生かして、産業機器市場にも積極的にアプローチしていく」と強調している。
車載向けホール素子(ホールセンサー)を主力製品とするドイツの半導体メーカーMicronas(ミクロナス)は、2012年12月13日に東京都内で記者説明会を開催し、産業機器市場の開拓に向けて積極的な攻勢をかける姿勢を表明した。
ホール素子は同社の事業の柱であり、同製品の売上高は、全体の90%を占める。これらのホール素子は、主に車載分野に向けて出荷されている。2012年前半の売上高構成は、応用分野別で車載が93%を占めるほどだ。
車載部品は、高い精度と信頼性を求められる。MicronasのCEO(最高経営責任者)を務めるMatthias Bopp氏によると、その高い精度と信頼性を支えるカギが、「製造の前工程から後工程までを一貫して自社で行えること」だという。Micronasは、ドイツに6インチ/8インチウエハー対応の製造ラインを持っている。加えて、後工程(組み立て/検査)の拠点も同じ敷地内に所有している。同社は、欧州を中心に世界で900人の従業員を抱えているが、「この規模の半導体メーカーで、前工程だけでなく後工程まで行える企業は他にはあまりない」(Bopp氏)という。
製品の信頼性の確保/維持に自信を持つMicronasが、その高い信頼性を生かして次に狙うのが、産業機器市場である。同社は、市場調査会社のデータを基に、自動車市場は2016年まで年平均成長率6%で伸びると見込んではいるが、Bopp氏が「欧州の経済低迷や、日中関係の悪化などの影響もあり、自動車市場は浮き沈みが激しい」と説明するように、決して安定している市場とはいえない。車載分野向けの製品が前述の通り売上高の9割を占めるMicronasとしては、ターゲット市場を広げ、自動車以外の分野における売り上げも伸ばしておきたいところだろう。
産業機器分野への参入を狙うに当たり、Micronasは、ガスセンサーや、モーター/アクチュエータ用の制御ICなどの開発や販売も始めている。例えば、「HVC 24xyB」は、8ビットマイコンの他、コンパレータ、発振子、温度センサー、LIN(Local Interconnect Network)、SPI、I2Cなどを1パッケージに集積した、ブラシレスDCモーターやアクチュエータ向けの制御ICだ。ホール素子を接続するインタフェースも備えており、HVC 24xyBとMicronasのホール素子を組み合わせることで、きめ細かくモーターなどを制御できるシステムが容易に実現できるとしている。
現在、自動車1台当たりには、各種モーター/アクチュエータが約30個搭載されているという。このためMicronasは、ブラシレスDC市場は今後数年間にわたり、自動車市場よりも高い成長率を期待できるとしている。
Micronasの日本法人であるミクロナス・ジャパンも、同様に産業機器分野に積極的にアプローチをかける方針だ。ミクロナス・ジャパンの売上高構成も、9割が自動車向けを占めている。現在、デンソーやアイシン精機といった自動車分野のティア1サプライヤを中心に、日本国内では300社ほどと取引がある。ミクロナス・ジャパンは、産業機器向けの製品の売り上げ目標について「具体的な数値は公表できない」としているが、既に産業機器メーカーと取引を開始しているという。
アジアでは日本以外にも注力
Micronasにとって、アジア地域、とりわけ日本は最も重要な市場だといえる。同社の売上高を地域別に見ると、アジアは6割を超えており、さらに、日本はそのうちのほぼ9割を占める。欧州、アジア、米国、その他の各地域における2012年前半の売上高は、2011年前半に比べ、アジアだけが25%増というプラス成長を遂げた。一方、欧州は−11%、米国は−6%となっている。
Micronasは、「当社にとって日本は非常に重要な市場」(Bopp氏)と位置付けながらも、領土問題をめぐり中国で日本車の販売が激減しているといった情勢を考慮し、今後は中国や韓国、インドでのシェア拡大にも力を入れていくという。実際に、中国の上海には営業所を構えており、韓国やインドでも販売代理店との取引がある。
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