「みちびき」対応の測位ソリューション、測位誤差は1メートル:ET2012
コアは、ET2012で、日本の準天頂衛星「みちびき」に対応する高精度測位ソリューションを展示した。従来のGPSだけを用いる場合は測位誤差が数m以上あるのに対して、同製品は測位誤差が1m程度で済むという。
コアは、「Embedded Technology 2012/組込み総合技術展(ET2012)」(2012年11月14〜16日、パシフィコ横浜)において、準天頂衛星システムに対応する高精度測位ソリューションを展示した。出展企業の中から、優れた製品、技術、ソリューションなどを表彰するETアワード(関連記事)で、オートモーティブ/交通システム部門の優秀賞を獲得した製品である。
同製品は、日本の準天頂衛星(QZS)「みちびき」と米国のGPS(全地球測位システム)の測位信号を受信できる、QZS+GPS受信機である。準天頂衛星の補完信号(L1-C/A)だけでなく、補強信号(L1-SAIF)も受信可能であり、測位誤差は1m程度で済む。GPSの測位信号だけを用いると測位誤差は数m以上になるため、従来よりも高精度の測位が可能になる。
コアの準天頂衛星システムに対応する高精度測位ソリューションの展示パネル。展示パネルの右側にあるのが製品の本体。中央にある写真では、移動体の測位精度を比較をしている。青線が同製品で、赤色が競合他社品である。(クリックで拡大)
自動車など移動体の測位で利用する場合でも、独自に最適化したアルゴリズムによって、競合他社のGPS受信機よりも高い測位精度を実現しているという。さらに、QZS+GPS受信機を開発する上で、測位信号の処理から制御までの、測位ソリューションに必要な回路やソフトウェアを自社でフルスクラッチ開発した経験から、顧客の要望に合わせたカスタマイズにも対応できるという。
コアの先端組み込み開発センターでシグナルプロセシング技術担当の副技師長を務める西出隆広氏は、「QZS+GPS受信機については、日本の準天頂衛星がまだ全て打ち上げられていないこともあって、大学や研究機関の一部から需要がある程度に限られている。しかし、測位ソリューションの開発力を評価していただいた顧客から、衛星測位技術を用いたカスタマイズ案件を獲得できている」と語る。
同社は今後、DSPベースのQZS+GPS受信機の開発に取り組む方針である。西出氏は、「今回展示したQZS+GPS受信機は、信号処理部をFPGAに実装しているが、米国のGPSや日本の準天頂衛星システムだけでなく、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のCOMPASSなどにも対応するマルチGNSS(全地球航法衛星システム)対応受信機を開発しようとすると、さらに大型で高性能のFPGAが必要になる。このFPGAを、性能向上が著しいDSPに替えて、信号処理をソフトウェアで行えば、コスト低減や機能の柔軟性向上が可能になるだろう」と述べている。
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