2020年までに国内で最も伸びるエネルギー源は?:スマートグリッド(2/2 ページ)
今後成長が期待できる再生可能エネルギーについて、2012年度と2020年度の国内市場規模を富士経済が予測した。従来の家庭用太陽光発電システム一辺倒から、産業用へと成長分野が移り変わっていくという。
注目市場は産業の太陽光と風力
各種発電システムのうち、今後注目されるのどれだろうか。「FITの直接の恩恵を受けるのは、産業/業務用システムである。その中でも市場規模が大きく、伸びが著しい市場は2つある。産業用太陽光発電システムSI市場と、産業用風力発電システムSI市場だ」(富士経済)*2)。
*2) 発電システムの部材と施工・設置を合わせた市場を同社は「システムSI市場」と呼んでいる。
産業用太陽光発電システムSI市場は、2009年度から2010年度にかけて成長してきたが、2011年度は補助金終了とFITの実施を待つ動きが出てきたことから縮小傾向にあった。FITの買い取り価格決定が2012年6月中旬までずれ込んだことや、制度の実施開始時期が同7月であるなど不利な条件があるものの、2011年度比4.6倍に成長すると見込む(図2)。
産業用風力発電システムSI市場の現状は、あまり芳しくない。設置に適した陸上の立地が限られており、2010年には補助金も打ち切られているからだ。このため、2012年度は前年度比4.0%減と見込んだ。今後は開発途上の洋上風力に期待が掛かる。漁業権などの課題が残るものの、2015年ごろには最初の製品化が始まると予想し、2020年度には2011年度比で4.5倍に成長するとした。
以上の産業/業務用の将来予測をまとめると、図4のようになる。太陽光発電システムは2012年度から2020年度に1.5倍に成長し、再生可能エネルギーとして最大の規模を誇る。成長率では風力発電システムが著しく、同期間中に4.7倍に膨らむ見込みだ。
図4 産業/業務用市場の内訳 左は2012年度の市場規模、右は2020年度の市場規模である。円の面積は市場規模を表す。太陽光発電システム(紺色)は規模は大きいが、市場全体に占める比率が2012年度の88%から2020年度の76%へと低下する。伸び率では同4%から12%へと拡大する風力発電システム(橙色)が著しい。緑色は地熱、小型水力、燃料電池の合計を、黄色はヒートポンプ式給湯システムと蓄電システムの合計を示している。富士経済の公表情報を基に作図。
なお、同社は今回の調査結果を書籍「2012 優遇政策導入で加速するエネルギーBOS市場の現状と将来展望」として販売している。BOS(Balance Of System:発電などに必要な部材)の市場予測の他、部材のサプライチェーンを分析し、システムインテグレーターや流通・施工業者34社の取り組みを事例分析したという。
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