繊維産業の進出が進む親日国ミャンマー、国内消費の動向は?:知っておきたいASEAN事情(10)(2/2 ページ)
ASEAN地域の中でも経済発展で後れを取るミャンマー。日本の資本が進出し始めている一方で、国内市場の構造はまだまだ。親日国ミャンマーの今後を占う。
国内市場の立ち上がりは……?
廉価な労働力に依存した海外シフトが否定されると、次に出てくるのがミャンマー国内市場を見込んだ進出タイプです。6000万人の人口をベースに、今後、国内経済の成長が期待されるミャンマーですが、現時点では、東南アジアで最も貧しい国です。2011年度の1人当たりの実質GDPは800米ドルしかありません。これはラオス(1000米ドル)、カンボジア(900米ドル)より低い数字です。
ミャンマーの実質GDP成長率(青線)。赤はタイの値。World Economic Outlook Database(IMF、April 2012)を基にGoogle Public Data Explorerでグラフ化したもの)
それでは、これからも外国からの投資をきっかけに国内経済が成長するという東南アジア各国が歩んで来た道をミャンマーも進むのでしょうか。
今後の経済成長は疑いのないところですが、現時点でそのペースは不明です。現在のミャンマーでは、デパート、スーパーといった「定価」取引はごく一部に限られています。つまり、食料、衣類、日用品のほとんどは、値札のない市場で取引されている状況です。
鎖国政策により、自給自足に近い消費構造であったため、物価水準も極めて低いレベルです。よって、今後、順調に経済成長が右肩上がりに推移したとしても、国民の平均レベルでそれなりの可処分所得を有するようになるには、10年単位の時間が必要でしょう。
これから、ミャンマーは新しい時代を迎えようとしています。この新しい時代はミャンマー人にさらなる幸福をもたらすのでしょうか。アジアでの地位低下の著しい日本ですが、ここは、東南アジア有数の親日国でもあるミャンマーの将来をしっかり見据えた官民一体の支援をぜひ実現してほしいものです。
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さて、ご愛読いただいている本連載「知っておきたいASEAN事情」ですが、次回からは1つの国に拘らず、東南アジア地域全般を対象に、製造業界の皆さんが知っておくべきタイムリーな情報をお届していく予定です。お楽しみに!
筆者紹介
(株)DATA COLLECTION SYSTEMS代表取締役 栗田巧(くりた たくみ)
1995年 Data Collection Systems (Malaysia) Sdn Bhd設立
2003年 Data Collection Systems Thailand) Co., Ltd.設立
2006年 Data Collection Systems (China)設立
2010年 Asprova Asia Sdn Bhd設立- アスプローバ(株)との合弁会社
1992年より2008年までの16年間マレーシア在住
海外の現地法人は? アジアの市場の動向は?:「海外生産」コーナー
独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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