テスラが「モデルS」の車台を公開、「容量当たりの電池コストを大幅に低減」:電気自動車(1/2 ページ)
Tesla Motors(テスラ)は、東京都内の同社ショールームで、セダンタイプのEV「Model S(モデルS)」の車台を公開。中核部品である電池パックの開発を担当するカート・ケルティ氏が来日し、モデルSを構成する独自技術について解説した。
電気自動車(EV)ベンチャーのTesla Motors(テスラ)は2012年8月30日、東京都内の同社ショールーム(東京都港区)で記者会見を開き、セダンタイプのEV「Model S(モデルS)」の車台を公開した。モデルSは、6月22日から米国市場向けの出荷を始めている。日本を含めたアジア市場向けの右ハンドル車の出荷開始は2013年中旬を予定している。
会見のために、テスラのバッテリー技術部門でディレクターを務めるKurt Kelty(カート・ケルティ)氏(関連記事)が来日し、モデルSの技術について説明した。
ここからは、今回公開した車台に組み込まれている部品について、車台の前部から追って見ていこう。
車台前部には補機類を搭載
「モデルS」は、一般的なガソリンエンジン車の車両前方にあるエンジンルームが荷室になっている。このようなことを実現できたのは、車台の前部には主に補機類のみを搭載し、モーターやインバータは車台後部、リチウムイオン電池パックは床下に配置しているからだ。
車台の前部には、ラック&ピニオン式の電動パワーステアリングや、ボディのロールを抑えるスウェイバーの他に、エアサスペンション用の空気圧ポンプ、ブレーキ用真空ポンプ、ABS(アンチロックブレーキシステム)とトラクションコントロール用のECU(電子制御ユニット)、そしてモーター、インバータ、リチウムイオン電池パックに冷却液を送るためのコンプレッサなどが組み込まれている。
ケルティ氏は、「最も重い部品である電池パックを、スウェイバーより下側になる床下に配置していることもあって、スウェイバーの強度をそれほど高くする必要がなかった」と語る。
電池パックのエネルギー密度は他社の1.3〜1.4倍
車台中央には電池パックが搭載されている。モデルSは、搭載する電池容量と満充電からの走行距離が異なる3つのグレードがある。電池容量40kWh/走行距離160マイル(約257km)の「S1」、60kWh/230マイル(約370km)の「S2」、85kWh/300マイル(約482km)の「S3」だ。S3の電池容量はS1の2倍以上になるものの、車両重量は100kg程度しか異ならないという。ケルティ氏は、「車両の安全性試験をやりやすくするために、ほぼ同じ車両重量にした」と説明する。
テスラのEVの電池パックといえば、ノートPCなどに用いられている18650サイズ(直径18mm×長さ65mm)のリチウムイオン電池セルを使用していることが特徴である。電池セルの供給メーカーとしては、2010年1月に提携したパナソニックの名前が挙がっている。しかしケルティ氏は、「もちろんパナソニックの電池セルは採用しているが、安定調達のためにパナソニック以外の電池セルも使用している」(同氏)と述べる。
電池パックのエネルギー密度は、他社のEVよりも30〜40%高いという。コストについても、「Wh当たりの価格で見れば、モデルSの電池パックは他社のEVと比べて最も安価なのは確実だ」(同氏)という。
さらに、整備工場などにおける電池パックの交換時間は、5分程度と極めて短い。これは、工場での最終組み立てを容易に行えるようにモデルSを設計したことによるものだ。
電池パックの温度を制御するための熱媒体には液体を用いている。ケルティ氏は、「EVの電池パックは、どのような温度環境下でも、きちんと温度を制御できなければならない。今後のEVは、液体で電池パックの温度を制御する方式が主流になるだろう」と主張する。
この他、テスラが2008年から販売しているEVスポーツカー「Roadster」で発生した、車両を充電しないまま放置した場合に起こる電池パックの容量低下の問題にも対応した。「モデルSでは待機時の消費電力を大幅に削減したので、数カ月放置したとしても、電池容量はゼロにならない」(同氏)という。
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