Android搭載ドングル型コンピュータの可能性と課題:金山二郎のAndroid Watch(7)(2/3 ページ)
Android搭載ドングル型コンピュータは、われわれの暮らしを大きく変える可能性を秘めている。本稿では、その特徴・課題を整理しながら、単なるAndroid PCとしてではなく、専用端末としての利用を想定した新たなビジネス/サービス形態を検討する。
Android搭載ドングル型コンピュータで広がる新しいサービス
ドングル型コンピュータは、これまでにない全く新しいサービスの形態を創出する可能性を秘めています。しかし、一見しただけでは「何に使ってよいのか分からない」という方もいらっしゃることでしょう。
そこで本稿では、Android搭載ドングル型コンピュータを“ポータブルなSTB”として捉えてみることにします。以降を読み進めて頂ければ、きっとその有用性をご理解いただけると思います。
実際、CX-01はSTBの機能を持っている立派な「Android TV」です。ソフトウェアプラットフォームとしてAndroidを搭載しているだけではなく、TVサービスのためのアプリケーションも備えています。つまり、CX-01は“ポータブルなサービスプラットフォーム”なのです。マルチメディアサービスの供給側にとっては、「願ってもないデバイス」と言えます。
せっかくのマルチメディアサービスですから、利用者は大きな画面で楽しみたいですし、さまざまな場所で楽しみたいという思いもあるでしょう。しかし、現在普及している据え置きタイプのSTBの場合、持ち歩きは現実的ではありません。さらに、コンテンツを持ち出すために、スマートフォンなどにデータをコピーする作業も手間ですし、家族全員で1台のデバイスを共有するため、ユーザーごとのコンテンツ管理が必要になります。
手の中に収まるドングル型コンピュータであれば、家族の共有デバイスとしてではなく、“個人の持ち物(デバイス)”として気軽に持ち歩くことが可能になります。表示はさまざまでも、クライアントデバイスはポータブルSTBに一元化されるので、サービス事業者の運営も楽になります。
ビジネス形態としては、複数のケースが考えられます。例えば、最近の通信事業者は、コンテンツサービスを充実させて新規契約を呼び込み、既存契約を継続させたいと考えています(画像4)。同時に、ほとんどのコンテンツサービス事業者も自社サービスに多様性を持たせたいと思っていることでしょう。こうした要求に、ドングル型コンピュータは最適です。何せ1台2500円(501台以上の注文の場合)です。仮に1万台を無料で配るとすると、1台当たりの値段はもっと下がるでしょう。その投資額は、発生するコンテンツ利用料から賄います。
このようなデバイスを“汎用コンピュータ”に仕立てることもできますが、筆者は、“マルチメディアサービスに特化した専用コンピュータ”にすべきだと考えます。なぜなら、ITにそれほど詳しくない一般ユーザーのためには、用途を絞って使い勝手を良くすることが重要だからです。
これまでの連載でも述べてきた通り、「iOS」の場合はアップルが一元的にコントロールしているので、アップル製品として登場しない限り、ドングル型コンピュータにiOSが入ることはありません。マイクロソフトのWindowsは、Windows 8、Windows Phone 8の生みの苦しみのさなかであり、ドングル型コンピュータどころではないでしょう。その点、Androidは、クライアントデバイス向けに十分な機能と性能を持ち、数あるコンテンツサービスに都合の良い形に改造できる唯一のソフトウェアプラットフォームであり、しかも無料で利用できます。
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