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開発中止の危機を乗り越えヒット商品に、「EyeSight」成功の原動力とは富士重工業 EyeSight 開発担当者インタビュー(3/3 ページ)

富士重工業のステレオカメラを用いた運転支援システム「EyeSight」の販売が好調だ。同社の主力車種「レガシィ」では、新車販売時の装着率が90%にも達するという。ヒット商品に成長したEyeSightだが、今ある成功の陰には開発陣の20年以上にわたる苦闘があった。基礎研究の段階から開発に携わってきた樋渡穣氏に、EyeSight開発の道のりについて聞いた。

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「ADA」から「SI-Cruise」、そして「EyeSight」へ

MONOist そうなると、ステレオカメラを使った運転支援システムの開発がここで中止になっていてもおかしくありませんね。

樋渡氏 その通りです。しかし、ステレオカメラを含めた運転支援システム開発のノウハウを生かし続けるためにも、何らかのつなぎの活動が必要だと考えました。そこで、ステレオカメラではなく、安価なレーザーレーダーを用いたクルーズコントロール機能特化型の運転支援システム「SI-Cruise」を開発することにしました。2006年11月に発売したSI-Cruiseの販売が好調だったこともあり、利便機能としての運転支援システムに対する社内認知度が高まったように思います。

「SI-Cruise」の動作イメージ
「Si-Cruise」の動作イメージ。センサーには、ステレオカメラではなくレーザーレーダーを使用している。(クリックで拡大) 出典:富士重工業

 加えて、センサーと走行制御システムとの連携を進化させることもできました。Eyesight(Ver.2)の時速30km以下で衝突を回避できる自動ブレーキを実現する上で、SI-Cruiseの開発成果は重要な役割を果たしています。

 なお、SI-Cruiseの頃からは、私は研究所における自動運転車両の開発プロジェクトを担当するかたわら、運転支援システムの開発を支援する側に回りました。

MONOist SI-Cruiseの成果を受けて、再びステレオカメラを用いた運転支援システムとして「EyeSight」を2008年5月に発売しました。

EyeSightのステレオカメラは、歩行者、自転車、他車両などを検知できる
EyeSightのステレオカメラは、歩行者、自転車、他車両などを検知できる(クリックで拡大) 出典:富士重工業

樋渡氏 EyeSightの開発に向けて最大の問題になったのが、ステレオカメラのサプライヤでした。ここでサプライヤとして名乗りを上げてくれたのが日立製作所です。また、カメラユニットと処理装置を一体化した新たなステレオカメラも開発しました。

 EyeSightのステレオカメラはレーザーレーダーよりも検知性能が高いこともあって、SI-Cruiseと比べてクルーズコントロール性能が向上しました。ADAでは搭載していなかったプリクラッシュセーフティシステムの機能も搭載しています。

 ADAと比べて大幅に低減した20万円という価格もあって、EyeSightはヒット商品になる兆しが見え始めました。装着率は、ADAのころの数%から、Eyesight(Ver.2)の発売直前には50%まで伸びたのです。

MONOist 現在、Eyesight(Ver.2)の装着率は90%に達しています。

樋渡氏 開発担当者として、ステレオカメラがここまで受け入れられるようになったのは、それまでの経緯を考えると信じられないというのが正直なところです。今後も、ADA、SI-Cruise、EyeSightの開発で経験した知見やノウハウを生かして、新たな安全システムを開発していきたいですね。



 なお樋渡氏は、2012年9月12〜14日に開催される「ソフトウェア品質シンポジウム2012」(東洋大学白山キャンパス)の基調講演に登壇する予定だ。富士重工業が開発してきたステレオカメラをはじめとする安全技術に加えて、EyeSightの先を目指した自律自動運転技術の開発取り組みなどについて紹介する。

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