デンソーがEVに最適なV2Hシステムを開発、定置型蓄電池からの急速充電が可能:電気自動車
デンソーは、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)と連携しながら、定置型蓄電池を備えるスマートハウスと電気自動車(EV)の間での相互電力供給を直流で行えるV2H(Vehicle to Home)システムを開発したと発表した。定置型蓄電池を活用することで、電力契約を引き上げなくてもEVへの急速充電を行える。
デンソーは2012年7月24日、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)と連携しながら、定置型蓄電池を備えるスマートハウスと電気自動車(EV)の間での相互電力供給を直流で行えるV2H(Vehicle to Home)システムを開発したと発表した。同社が参加している経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証事業」の一環として開発したもので、2013年内に同システムを用いた実証実験を豊田市内で始める予定である。
今回デンソーが開発したV2Hシステムは、HEMS用コントローラと、交流−直流変換装置(PCS)を組み込んだ定置型蓄電池、EVと定置型蓄電池の間で電力をやりとりするのに用いる充電スタンドから構成されている。
このV2Hシステムの特徴は2つある。1つは、定置型蓄電池に貯めた電力を使って直流でEVに急速充電できることだ。これまで、住宅で数kW以上の出力で急速充電を行えるようにするには、電力契約を従来よりも高いものに引き上げる必要があった。デンソーのV2Hシステムは、定置型蓄電池に貯めた電力を使って急速充電するので、電力契約を変更する必要がない。急速充電時の出力は8kWで、一般的なEVであれば15分間で約20km走行可能な電力を充電できるという。なお、EVと充電スタンドの間は、CHAdeMO規格に準拠する急速充電コネクタを使って接続する。
もう1つは、HEMS用コントローラを使って、スマートハウスに設置した太陽光発電システム、住宅内にある家電、定置型蓄電池、EVを連携させて、状況に合わせて電力を制御する「エコV2H機能」である。例えば、HEMS用コントローラが、その日のEVの走行予定と家庭内の電力使用量を予測した結果から、EVと定置型蓄電池の充電や放電を行える。他にも、太陽光発電システムの余剰電力を売電する替わりにEVや定置型蓄電池に貯めておいて、夏の昼間などの電力使用量のピーク時間帯に使用することもできる。EVや定置型蓄電池から出力される直流電力は、定置型蓄電池に組み込んだPCSを使って、住宅内で使用できる交流電力に変換しているという。
トヨタのV2Hシステムとは異なる
次世代エネルギー・社会システム実証事業の豊田市における実証実験では、PHEVとスマートハウスの間での相互電力供給を交流で行うシステムを、トヨタ自動車が中心になって開発している(関連記事)。
しかしEVの場合、エンジンを搭載するPHEVと違って、電池に電力が残っていないと自動車として利用することができない。もし、電池残量が少ないときに、EVを自動車として利用しなければならない状況が発生したら、急速充電によって一定の値まで電池容量を回復させる必要がある。そこでデンソーは、EVに最適なV2Hシステムとして、定置型蓄電池から出力される直流電力を活用して、電力契約を引き上げなくても急速充電を行える機能を実現した。
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